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日照時間 ページ27

いまだに緊張はするけれど、

降谷くんと過ごす放課後はいつしか日常の一部になっていた。


初めの頃は、改善策や勉強方法を色々提案してくれて、

手取り足取りのような状態で教えてくれていたけど。


いつからか、大体は教えたんだからあとはお前次第だぞ、といった感じで

彼は彼で机に向かっている。


徐々に身についてきた暗記術や勉強法は、最近になってようやく実を結び始めてくれた。


やる気のしなかった日々の小テストも、今では降谷くんにいい報告ができるように、と頑張っている。


諸伏くんにも、成績のことを報告すると、

「よかったな」「すごいな」とあっさり褒めてくれるから、それが素直に嬉しかったりする。


そもそも、諸伏くんがなぜだか突然私と降谷くんを引き合わせなければ、

こんなことにはなっていなかっただろう。


きっと私一人で勉強したって今まで通り。


要領も暗記の仕方も笊で。何も変われていなかったと思う。


だからこそ、きっかけを作ってくれた諸伏くんにはとても感謝しているんだ。



視界の端で、トントンと綺麗な指先が机を叩いた。


顔を上げると降谷くんと目が合って、


「なあ、もう外暗い」


二人同時に窓の外に視線を移した。


「あ…ごめんね。そろそろ帰ろうか」


さっきまで西日が眩しかったのに。気づいたら太陽はどこにもいなかった。


夏がどんどん遠ざかっていく。


まだ時間は早くとも、帰り道が暗くなると降谷くんに申し訳ないなと思い、

早めに切り上げるようにしていると、必然的に図書室での勉強時間は少なくなっていく。


放課後の時間が日常になっていたために、削られていく寂しさはあるけど仕方ない。


ただでさえ放課後、付き合ってもらっているんだから、これ以上降谷くんに迷惑をかけたくない。


それぞれに靴を履き替えて。まだ冬ではない、然れどツンとした少し冷たい空間に足を踏み入れ、


「じゃあね、降谷くん」


いつも通り。ここでお別れをする。


ああ、家に帰りたくない。


重くて、暗い、飲み込まれそうな空気が漂うあの家は、息苦しい。


「暗いし送ってく」

「…え?」


憂鬱な足取りを止めて振り返れば。


暗くなって見えにくくなった降谷くんが、近づいて、鮮明に見える距離まで来ていた。

いきなり→←冬の前



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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時

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