あの夏の過ち。〈降谷零〉 (ページ23)

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現実ページ23

焼けるような太陽の暑さは幾分か和らいできたけれど。

まだまだ秋めく気配はないし冬なんてもっともっと遠くにいる。

猛暑日が続いた夏真っ盛りの頃に比べれば、汗は滝のように流れ出ることはない。

それでもまだ暑いのだ。登下校で歩いていると汗は出る。早く涼しくなってほしいと毎日願うばかり。

けれど今、私の背中や額には、それとは違う汗がじっとりと肌を伝い流れていた。

昨日と大体同じ時間。

同じ扉の前。

気にしても仕方ないかと、やけに大きく聞こえる鼓動を無視して入室した。

私は、自分のことを小心者だと自負している。そう思う要因に心当たりがある。

そんな小心者の私は、今朝から心臓が口から飛び出すのでは…と不安を抱きながら、

こうして放課後を迎えるに至った。

図書室に入ってから、原因である金色の彼は見当たらず、少しほっとしてから適当な席に座った。

…本当に今日から降谷くんに勉強を教わるのかな。

昨日の出来事はもしかしたら夢だったんじゃないだろうか。現に降谷くんはこの場にいない。

尊敬する降谷くんに、まさか勉強を教えてもらえるなんて。それは大変に有難いことだ。

けれど反面。私の馬鹿さ加減に呆れられてしまうことが嫌だと思った。

一方的な憧れ感情だけれど、少しでいいから良い所を見せたい。

…なんて。今さらだ。

ご丁寧に日々の小テストでさえ上から下まできっちり結果が張り出されるこの学校で、

私が下位中の下位であることは入学当初から思い知らされた。

学年一位の降谷くんから見たら、馬鹿な私が足掻いたところでそこまで大差ないだろう。

恥ずかしくて、嫌だけど、諦めろ。

深く息を吐き出し気合を入れて、明日の世界史の小テストのためにいそいそと教材を開く。

小テストなんて言い方が似つかわしくない問題量が待ち受けていると思うと頭が痛くなる。

がたりと隣の椅子が動いた。

「今日は世界史なのか」

同時に視界の端から声が降ってきて。驚きで出そうになった声を慌てて塞いだ。

降谷くんだ。

昨日は緊張でほとんど彼の方を見れなかった。

キラキラと淡く光る金色は驚くほど間近にあって。

釘付けになりかけた視線は、気持ち悪がられるぞと自分の一部が冷静に告げてくれたおかげで

すぐに外すことができた。