24 宿屋にて ページ24
「え、誰……？」
「もう忘れたのか？…傷付くな。お前を連れ去った男だよ」
「ハラショー…尾形は死んだはず」
死んだと思った人間が突然目の前に現れたら、誰でもびびる。Aは混乱した。
しかしどう見てもあの目…そして声。あの尾形百之助本人だ。髪型が変わっているものの、この独特な存在感。あまりにも尾形なのである。
死んだと思われた彼は、実は一命を取り留めていたのだ。
いい加減放せ。尾形はそう言いながら、持っていた銃の持ち手側でAの体をつん…と押す。
まあ一応女相手なのだから、力づくで腕を振り解いたり体を突き飛ばしたりする事はない、という彼なりの気遣いだった。のだが…
「わ…っ」
「あ」
肩のあたりを押し返そうとしたのだが、銃の先は彼女の胸に当たった。
そして胸が軽く弾む。外套越しでも分かるくらいに、ぽよっと。
尾形は真顔。Aは驚いてようやく手を離した。
彼女が何か言いたげにしていたが、まずは鶴見一派の追手から逃れなくてはならない。
来い。とだけ告げ、未だ混乱中のAの手を引きその場をあとにした。
不死身の杉元という二つ名は聞いてはいたが、不死身の尾形のことはまだ聞いてないぞ。
Aはあの状況から見事生還した彼を尊敬の眼差しで見つめる。
顎の手術痕に気付く。なんだか少し痛々しさがある…
負傷した現場を目撃しているので、尚更。
「尾形さんが生きてて嬉しいよ」
「ふん。女狐」
「え？なに？」
鶴見達から逃げおおせた二人は、山から然程離れていない町の宿に身を隠していた。
尾形はAと別れたあの刻を思い出す。
敵と判断した杉元の息の根を止めようとしていた、あの動き。忘れもしない。
「さあて、そろそろ教えてもらおうか」
金塊の件もそうだが、まずはAという女の素性が知りたい。一体何者なんだ。
そしてこの娘は俺にとって利用価値のある人間なのか…どうか。判断しよう。
それまでは傍に居てもらう。
尾形はほんの少し口角を上げてAを見た。
Aは彼の目に釘付けになった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ゴールデンカムイ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メルテア(プロフ) - 炊きたてのお米くらいあっつあつじゃん？でもう笑いすぎて感想書いちゃいましたww主人公面白すぎるwww神作品ありがとうございます！！m(_ _)m (8月31日 8時) (
レス) @page28 id: 296f866ede (このIDを非表示/違反報告)
Chloe(プロフ) - 蛙奈さん» 蛙奈様へ。ありがとうございます！私の中で鯉登は普段ピュアピュアなのにたまに男らしさを見せるカッコイイ奴って感じだったりします！鯉登もちょいちょい絡んできますのでまた読んでいただけると嬉しいです！ (2021年10月10日 20時) (レス) id: b0de3b5808 (このIDを非表示/違反報告)
蛙奈(プロフ) - 鯉登少尉のピュアさに悶絶して思わずコメントしました…私自身鯉登少尉推しなのでとても嬉しいです！頑張ってください！ (2021年10月10日 16時) (レス) id: dbf954f045 (このIDを非表示/違反報告)
Chloe(プロフ) - 蛙奈さん» 蛙奈様へ。はじめまして！コメントありがとうございます！嬉しいです。色仕掛けちょいちょい出す予定です(笑)素敵なご感想ありがとうございました！ (2021年10月7日 19時) (レス) id: b0de3b5808 (このIDを非表示/違反報告)
蛙奈(プロフ) - コメント失礼します。とても面白いです！特に尾形の色仕掛けが色んな意味でドキドキしました！主人公の食いっぷりも読んでいてお腹が空いてしまいます。素敵な作品！更新待ってます。 (2021年10月7日 17時) (レス) id: dbf954f045 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Chloe | 作成日時：2021年10月5日 1時
