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新人相手ならロクな事にならないのは目に見えているし、楽しそうに騒いでいるメンバーを見ると自然に涙が溢れそうになってしまう。
荷物制限がどこまでの範囲を指すか解らないから、とりあえず服も替えが利くようにニットを二枚重ねに着ている。暑い。
言われた通り必需品だけはきちんと纏めて置いた。全部没収されたら終わりだけど。
まさかそこまではしない……とは思ってるけど、スタッフさんの口ぶりが不穏だったのが気になる。
私達はいったい何をさせられるんだろう。
「ウォヌヒョン可哀想、何も食べられなくて」
「オレは食ってるだろ、栗」
「おじいちゃんみたい」
「うるさい。お前何か知ってるんだろ、全部言え」
「ほら、おじいちゃん。新しい栗の皮が剥けましたよ」
「ありがとう、ばあさんや」
なんだかんだ小芝居に乗ってくれるウォヌヒョンの皿へ栗を乗せるけど、これじゃあまるで餌にしか見えない。
私がダイエットをしている時のご飯を、よくメンバーの皆から「餌」と言われがちだけど、今日のウォヌヒョンの方がよっぽどだと思う。
これじゃあキツネじゃなくてリスだ、リス。
「ウォヌヒョン、なんで私がヒョンの為に身を挺して……指を犠牲にして、こんな事をしてるか解る？」
「カメラの前だから」
「違います。どうも、今の内に出来るだけご飯を食べておいた方が良いみたいで」
「はあ？本当に？」
「私も全部聞いた訳じゃないんですけど『ある素敵な日』とは簡単に言えないらしいんですよ」
「オレら何すんの」
「それは誰も教えてくれなくて……」
ウォヌヒョンが不信感を全開にしながら(と言ってもほとんどいつもの無表情だけど)製作スタッフを眺める。
みんなニコニコしていた。
知ってる人はいないけど、何故だか嫌な予感しかない。
そうこうしている間に、誰かが何かのキーワードを拾ったらしい。
スングァニがスタッフさんに酔い止めを渡されるのを横目で確認しながら、ウォヌヒョンとこそこそと問いかける。
「……私達船乗るの？」
「クルージング？」
「ええ……私船酔いする人間なんですけど……」
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作者名：せの
| 作成日時：2019年8月22日 10時
