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「ボノニは昔からそう言うよね」
「そう思ってるからだよ」
「最近は言わなかったのに」
「だってこんなの、骨の上に肉と皮が乗っかってるだけでしょ。優劣なんてないよ」
「さっき私の事を綺麗って言ってくれたのはお世辞だった？」
「違うよ、あれは本心」
「矛盾してる」
「人間ってそういうものだよ」
鏡を拭いていたシートをゴミ箱に捨てたAが、軽く手を洗ってタオルで手を拭いた。
それを洗濯籠に放り込んで、隣に立ったオレを少しだけ見上げる。
「私はボノニの顔、綺麗だと思ってるよ」
「そっか」
「あんまり嬉しくなさそう」
「うん」
「……困ったな」
「Aはよく褒められるでしょ？いつもどう思ってる？」
腕を組んで天井を見上げたAが「うーん」と唸る。
「正直、面倒くさいと思うのが大半を締めてる」
「本当に？」
「私は特に……お兄ちゃんもあの顔でしょ？」
「うん」
「だから周りの人に言われることも多くて。どう言えば生意気に聞こえないかなって、ちょっと鬱陶しく思う事もあるよ」
Aが少し気まずそうに、でもどこか悪戯な顔をして笑う。
そう感じているなんて思いもしなかった。
メンバーはともかく他人に対しての人当たりは飛びぬけて良いから、誉め言葉も素直に受け取ってるんだとばかり思っていたけど違うらしい。
「お兄ちゃんと似てない顔を比べられるのも正直苦手。私だって甘くて優しそうな顔が良かった」
「そう？可愛いと思うけど」
「……今日のボノニ、いつにも増して褒めてくるね」
「ごめん、嫌だった？」
「なんで？むしろ嬉しいけど」
「でも、さっきは面倒だって」
そう言った語尾は少しだけ小さくなってしまった。
組んでいた腕を解いてAがくすくすと笑う口元を片手で隠す。
「ねえ、ボノニ。私は人によって考え方がころころ変わるよ」
「うん？」
「どうでも良い人に褒められるのは体力を使うけど、好きな人に褒められるのは正直に言って嬉しかったりする」
「そっか」
「うん。私はボノニが褒めてくれると嬉しいし、家族や身内が褒めてくれるのも嬉しいし、ファンの人が褒めてくれるのも当たり前に嬉しいと思う」
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作者名：せの
| 作成日時：2019年8月22日 10時
