泣.キ.虫.カ.レ.シ - 南 倉 -

ツヨムシ ページ15

「だー、くっそ！！」



中１の頃、
試合で負けた俺は、それだけで悔しくて泣いた。


たかが練習試合なのに。




「ちゅーか、あの人めっちゃ上手くね？」


「……あぁ、あのかっこいい……」



隣で、
ゴーグルとメガネのトークが耳に入ってきた。



俺もそちらに目をやる。




「……！？」



リフティングをやっている、
紫色の髪の毛で、
すごくイケメンな、先輩。



俺は、
一瞬で目を奪われた。



「あれ、君もあの人気になるの？」


「はぁ？あぁ、別に……」


「というか……
同じクラスの倉間くん、ですよね……」


「……、そう、だけど」




その日を境に、
俺と浜野と速水は話すようになった。




＿＿＿そんな、中１。




.




「南沢、さっ……」




いなくならないで。


二人でFWだったのに。



この捨てられた10番は、
この置いていかれた11番は、


どうするんですか？




「ごめん、倉間」




そんな言葉が聴きたいんじゃない。


俺は_＿＿＿




貴方と一緒にサッカーがしたい。


好きだから。





南沢さんが去った後、

俺は泣かなくなった。





「はぁ」



フィフスセクターとか嘆いていたけど、
今はサッカーが楽しすぎて仕方ない。





「なにため息ついてるんですか？倉間先輩」



「剣城か、別に」



「俺、10番です」



「知ってるし、そんなこと」



「俺とFWなんて、嫌ですか？」



「別にいいんじゃね？
つーかお前身長高すぎて首いてーんだよ！」




FWは、FW同士話すことが多い。

俺と南沢さんも、そんな感じで仲良くなった。



南沢さんは、
あまり身長高くないから、

だから……



首も痛くなかった。




そう思うと、
目が潤んできた。





「……思い出しますか」


「別に」



「倉間先輩……」


「なんなんだよ、お前は」



「俺じゃダメですか！」





決めた、南沢さん。





「……、は？」






俺、もう泣かない。


これからは＿＿＿＿





「好きなんです、倉間先輩の可愛らしいところ」






"男"になる。




*

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