許嫁で純愛【呪術廻戦】

八本 ページ9

no side





「……何か用？大人同士で話してたんじゃないの。」


「いやお恥ずかしい。
厠(かわや)をお借りしようとして迷いまして。」





Aの背後に立っていたのは古式父。
相変わらずニコニコと笑っていた。





「A。」


『ｯ……！！』


「来なさい。」





笑顔で手招きする古式父。
Aの顔面は蒼白で震えながら近寄った。





刹那、乾いた音が廊下に響く。
整えた髪や化粧が崩れるのもお構い無しに
古式父がAの頬を打ったのだ。





「なっ……！？」





流石の五条も目を見開いた。
Aは頬を打たれた衝撃で顔を横に向ける。





「何故、言われた通りに出来ない(・・・・・・・・・・・)？
あれだけ言ったのに分からないのか？
挙句には悟坊ちゃんに迷惑をかけて。」


『ご、めんなさい……』


「謝ればいい訳じゃない。」





震えた唇で謝罪を続けるA。
五条はここで初めてAの事情を理解した。





「古式サン、何してんの。
今この子とは俺が話してたんだけど。」


「！！
しかし、Aは坊ちゃんに……」


「迷惑なんて掛けられてない。
いいからその手を離せよ。」




五条に睨まれた古式父は渋々と手を離す。
今度は五条がAの手を握った。





「便所なら戻って右。……着いてくんなよ。」





五条はAの手を握ったまま歩き出す。
Aは困惑しながらもされるがままになっていた。





しばらく歩いて五条は
ガラス張りの扉を勢いよく開ける。





「……庭。」





大きく開かれた扉の向こうには
美しい花々が咲き誇り、とても綺麗だった。





『わぁ…………』


「！」





Aは思わず声を漏らして庭を眺める。
打たれた頬は痛々しく赤くなっていたが
目はキラキラと輝いていた。





『きれい、』


「……そ。」


『あ、あの……で、出ても大丈夫、ですか……？』


「別に良いでしょ。」


『あ、ありがとうございます……』






Aは若干興奮気味に庭へおりる。
五条は縁側に座ってそんなAを眺めた。






純粋に微笑むAに
五条の胸がくすぐったく締め付けられる。





小さな花や大きな花。
色とりどりの花を眺めるAは時折、空を仰ぐ。





何度かそれを繰り返すAに
五条は思わず立ち上がってAに近寄る。





「…………さっきは酷いこと言ってごめん。」


『ｯ……！？』





五条はボソリとAの横で呟いた。

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