六本 ページ7
貴女side
１０歳になって数日後、
父は私に綺麗な着物と化粧を施した。
その頃には、私は家族で１番強くなっていた。
私の名前は御三家にも届いていたらしい。
「笑え。」
父はそう言った。
「何時ものように笑っていなさい。」
私には「笑顔の仮面」がある。
私は無愛想だからと作らされたもうひとつの顔。
『はい。』
本当に笑ったのはいつだろうか。
泣いたり、怒ったりしたのはいつだろうか。
そんなことを考えながら、
父に肩を押されて外へ出る。
家の前には黒塗りの車が停まっていた。
その車に乗り込むと父は前に座る。
「これから五条家に向かう。
余計なことは喋るな。大人しく、笑っていなさい。
私がお前を地下室に閉じ込めたことや、
術式の練習で付けた傷のことは黙っていなさい。
……五条家嫡男の悟坊ちゃんに会ったら、
きちんと挨拶をして気に入られなさい。
それが我が家のためになる。分かったね？」
『はい。』
ここ最近、父の顔をまともに見ていない。
いや、顔は見ているけれど、顔として見ていない。
私は父がどんな呪霊よりも怖い。
呪いだとか、祟りだとか、そんなのよりも怖い。
『(ああ……めんどくさい。
何で私が五条家に行かなきゃいけないの？
どうせお見合いかなにかでしょう。
私を御三家に関わらせて家名を上げるんでしょう。
自分の力じゃ出来なかったから。
一番上の兄様も力不足だから私に頼るしかない。
ほんと、馬鹿みたい。)』
心の中でため息をついて、
車が止まるまでぼんやりと外を眺めた。
────────────
───────
────
「こちらでお待ち下さい。」
「はい。ありがとうございます。」
父は媚びる様な笑顔を浮かべて
五条家の人間に愛想を振りまいた。
こんな父が心底恥ずかしかった。
今すぐにでも辞めろと言って帰りたかった。
「遅くなりましたな。」
「いえ！
お忙しい中お時間を作って頂いて有難う御座います。」
「いや、ご息女の評判は届いていましてね。
興味はありましたので。」
「それはそれは──────」
社交辞令を繰り返す両家の大黒柱たち。
聞く必要は無い。
私は笑顔で、父が言う通りに居るだけ。
「君が…………Aさん、だね？」
『はい。この度はお目にかかれて光栄です。』
そう言って、私は笑った。
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りんごりんご - え、神ですか?こんなに作品の組み立てが上手なの、なかなか無いですよ!神ですか?いや神ですよね? (2021年1月31日 18時) (
レス) id: f29ad8ba49 (このIDを非表示/違反報告)
くらくしょん - すごくお話をかかれるのが上手なんですね！、読んでいてとても楽しかったです、これからも頑張ってください (2020年12月6日 16時) (レス) id: 15035c8d2a (このIDを非表示/違反報告)
百 - 深凪さん» めっさ分かる!唇ちょっとピンクいのがめっちゃ可愛くて、五条先生のカッコいい感じとか余裕がある感じとのギャップヤバくてマジえらい。 (2020年11月30日 19時) (レス) id: 78401eb32b (このIDを非表示/違反報告)
深凪 - アニメ作画良すぎですよね！！私も五条先生の唇ぷるっぷるやんって思ってたので同じこと思ってる人がいて嬉しいです(笑)小説とっても面白いです！更新待ってます！！ (2020年11月18日 22時) (レス) id: a6413cd937 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 凄い面白いです！無理のない範囲で更新頑張って下さい！ (2020年11月18日 16時) (レス) id: 32b6d86f2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙羅
| 作成日時：2020年10月25日 22時
