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10月 ページ29

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『信ちゃーん!これから時間あるー?』





Aは田圃の中に立っていた。

歩いてきた北に手を振りながら声を張る。





いつのもの着物ではなく

つい先日、北の祖母に作って貰った服を着ていた。





「大丈夫やで。何かあるん?」


『美味しい木の実、採りに行こ思て!
信ちゃんとの約束やもん!』


「ああ、せやったな。ええよ、今から行くか?」


『うん!』





稲刈りも終わり、

玄米になった米は保管されている。

もう少ししたら出荷する予定だ。





『ほんなら信ちゃん、ちゃんと着いて来てな!
山ん中歩くから気を付けて!』


「おん。」





タタ、と駆け寄ったAは

北と共にお社へ続く階段を目指した。





『お社の裏に獣道があんねんけど……
そこ通って山登るとたくさん木の実あるねん。』


「そうなん?お社の裏は行ったこと無かったなあ。」





北が疲れないように速度を合わせるA。





長い長い階段を登り終えると

ちょうど掃除をしている宮司が居た。





「こんにちは。」


「こんにちは。またご参拝に来てくれたん?」


「あ……ついでやし、お参りしてきます。」


「ついで……?」





Aは姿を見せていないのか

北と宮司を交互に見て立っていた。





「えっと……」





するとAは草むらに駆け込む。

草は駆け込んだ瞬間は微塵も揺れなかったが

次の瞬間には大きく草が揺れた。





「何や……?」


『ん!こんにちは宮司さん!!』





おかっぱ頭ではないAが

草の隙間から顔を覗かせた。





「いつの間に……こんにちは。
君はここで何をしてたん?」


『信ちゃんと待ち合わせや!な!信ちゃん!』


「!せやな。」





草むらから飛び出したAは

北の祖母特製スカートの裾を揺らして歩く。





『ほな、お参りしてからお散歩行こか!』


「そうしよか。」


「この季節は蛇が出るから気を付けて下さいね。」


『「ありがとうございます/!」』





参拝を済ませた2人はお社の裏手に回って行く。

それを不思議そうに見ていた宮司だったが

苦笑して境内の掃除を続けた。





.



『信ちゃん、ここや!ここ!』


「おお……ほんまに獣道やなあ……」





横に薙ぎ倒された草の道。

何とか人が1人通れそうな細さである。





『うちが居れば蛇も獣も寄らんわ。安心してや。』


「頼もしいな。任せたで、A。」





そう言って2人は獣道に入って行った。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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