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9月・続続々 ページ25

北信介side






ゆっくり目を開けば目の前にはAの顔。






「A!?」


『……おはようさん、信ちゃん。』






Aは申し訳なさそうに笑うと

そっと俺の頭を撫でた。





空はすっかり茜色で

俺は何時間も眠っていたらしい。





『信ちゃん、ごめんね。
うちの勝手で信ちゃんを振り回してごめん。』


「そんな、謝るんは俺の…………」





俺の方や、と言おうとするも

Aの小さな手がそっと俺の口を塞ぐ。





『……言い訳させてな、
うちな、信ちゃんにずっとくっついてたから
ほんまに邪魔になってしもたんやと思ってん。


あの台風の日もほんまは信ちゃんの側に居たんよ。
でもな、姿は見せんかった。


謝ってる信ちゃんを見て申し訳なくなったんや。
ああ、どないしよ、うちのせいや、って。


うちのせいやから、合わす顔が無い。
そう思ってずっと隠れてたんよ。


信ちゃんに嫌われたくなくて、
距離を置いておけば、嫌われへんかなって。』






そこまで言ってAの顔が少し歪む。






『でもな、すっごい寂しかった。
我慢して我慢して、ものすごく辛かった。

信ちゃんと話したいなあ、
また信ちゃんと田んぼ眺めたいなあって思った。

そんでな、約束を思い出してん。
信ちゃんのお米、食べさせて貰うんやった、って。
美味しい木の実がなる場所を教えるんや、って。



だから、会いに来た。
ごめんなさいって言いに来た。』







夢の中で会った"A"と同様、

涙は枯れてしまっているんだろう。


泣きそうな顔をしたAの目からは

一滴も涙は零れてこなかった。






思わず起き上がってAに手を伸ばす。






「A…………ごめんな……気付けなかった。
悲しんでる事に気付けなかった。

Aは、Aは邪魔やないよ。
ずっと居ってええんよ。

何ならほんまに俺に取り憑いてもええ。」






抱き締めたAの体は

秋の様な、優しい温もりを持っていた。







『…………しん、さん。』



「!」






ぽつりとAが呟いた。

"信"はさっき夢の中で名乗った名前や。






『よう思い出せんわ…………
ずっと昔にそんな名前の人が居った気がするけど…

でも……信ちゃんと同じくらい
とっても優しい人やった気がする。


…うちな、多分その人のお陰で人が好きやねん。』







照れた様に笑うAが

秋の夕日に照らされてとても綺麗に見えた。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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