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9月・続々 ページ24

北信介side





「誰…………?うちの名前を呼んだの誰…………?」



「おお……神の声を聞きよった……!!」


「おお…………!」






周りにいた人達が一斉にひれ伏し始めた。

それから口々に礼を告げて坂をおりていく。






俺は構わず建物に近寄った。






「中に居るの、Aなん?」



「…………せやで。あなたは、……誰なんですか?
村の人やないですよね、ほんまに神様なんですか?」



「俺は…………」






もし俺が過去に戻っていたとして、

歴史は変えたらあかんのとちゃうか?







そんな考えが浮かんで

北信介、と名乗るのはやめた。







「あ…………っと、信や。神様やないで。」


「しん……?しんさんは、……どこから来たん?
……かってに入って村の人に怒られなかったん?」


「どこから来たのかは俺も分からんねん。
村の人達は俺に気付かなかってん。大丈夫やった。」


「……?そ、そんならええけど……」






オドオドと話す声の主は弱っている様だが

俺の知っているAとそっくりの声をしていた。






「Aは……何でここに居るん?」


「…………いけにえ、や。
村に雨も降らんから、その災いをはらうためや。」






また"A"の声が震え始める。

泣くのを堪えてるみたいや。






「……うちな、もう、死ぬんや。
…………ここでもう何日も過ごしてんねん。

ずっと泣いとったんよ。
………………でも、もう、涙が出ぇへんねん。

すわるのも、つらいわ。」



「A……!」





段々と声が小さくなっていく。

ほんまに弱ってるんや。






「母さんもな、村の人もな……怖かったんよ、
だれも、うちの名前を呼んでくれへんから…………

暗くて、怖くて、寂しかった…………

さいごに、しんさんと話せてよかったわ…………
外にはちゃんと、優しい人もおんねんな…………

ありがとうな、しん…………さ、……………………………………………………………………」







そこで声が途切れた。

慌てて薄い板の扉を開く。







中には痩せ細った

おかっぱ頭の少女が横たわっていた。







「…………A、Aは優しいなあ、
村の為に……ええ子やな……頑張ったなあ……」







俺の知っているAと瓜二つのAの手を

そっと胸元に合わせる。







ゆっくり休んでな、と呟いたところで

めまいが襲いかかってきた。








壁が天井になって、意識が飛んだ。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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