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卌陸 ページ31

no side





「あ、アンタは…どうしてそんなに考えが違うの?
同じ人なんでしょ?」





少女はその『無』に怯えた。

怯えながらもそう質問した。

"A"は笑った。





『私をAが塗り替えてるだけ。
この考えはAの考えと同じ。

表に出す意見はAが決めてるの。
私はこうやって森の中に閉じ込められちゃった。

あまりに酷いことを考える自分が怖いからって。
酷いわねェ、私はAなのにねェ』





少女は震えた。

得体の知れない恐怖が少女を襲っていた。



この女は底が見えない。

真っ黒なんだ。どこまでも続く闇で真っ暗。






これがあの優しく美しく笑っていた女と同一人物。

信じられなかった。






『…………ごめんなさいねェ怖がらせちゃった。
うふふ、ちゃんと"精神の核"まで案内するわね』


「!」


『その前にアナタ、人でも殺したの?』


「え……?」


『アナタ、返り血だらけ。真っ赤よ、真っ赤。
うふふ、足も、手も、着物も真っ赤』






少女が自分の身体を見る。

錐を持った手が、草履を履いた足が赤い。





「ヒィッ……!殺してない!殺してないわ!
私はそんな酷いことしてない!!」





その言葉に"A"はそっと話し出す。





『…………人の"精神の核"を壊すということは
人を殺すのと同じなのよ。
そうやって、血がベッタリつくことと同じ。

貴女は「酷いこと」と言ったわね。
その「酷いこと」を今からしようとしてるのよ。


私が怖いんでしょう?
私みたいになりたくないでしょう?

なら、駄目じゃない。こんなことしちゃ。
貴女はもっと強くなりなさい。

武器なんかでじゃなくて、心を強くしなさい。
鬼なんかに負けてんじゃないわよ』





"A"の手には少女の錐。

少女は涙を零した。





「うぅ……何で、何でそんなこと言うのよ。
さっきまでとまるで別人じゃない……!」





ボロボロと零れる涙は

少女の身体についた血を流していく。





『言ったでしょう?私はA。Aは私。
元々の考えは同じなのよ。

"精神の核"を壊されて困るのも同じ。
貴女が苦しむのを可哀想と思うのも同じ。

貴女が壊すのは核じゃなくて自分よ』






"A"は少女を突き飛ばす。

刹那、少女は小さな白い光に包まれた。






『木霊が貴女の味方についてくれるわ。
…………その子を連れて行きなさい』







少女は赤い草原に戻されて

再び裂け目の向こう側に押し戻された。

卌漆→←卌伍



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沙羅(プロフ) - 邑さん» コメントありがとうございます!!長らくお付き合い頂いて本当に嬉しいです……!芽吹お師匠のところは私も書いてて泣きそうでした……今後は宇髄さん以外にも沢山の方が登場予定なので、ぜひよろしくお願いしますー!! (2020年2月2日 18時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
- 前編から読ませて頂いています、凄くこの作品好きです!!師範のところ、もう、涙がぼろぼろでてきました...!! (2020年2月2日 17時) (レス) id: 451c1f62e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年1月26日 21時

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