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丗壱 ページ33

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「師範!」

『なんだ、待ってたの?』




師範が少し驚いたように歩いてくる。




夜通し走っていたというのに

疲れを感じさせない堂々とした歩きだった。




「飯、行きましょう!!」

『嗚呼、そうだったね。行こうか』




ふふ、と可憐に笑う師範を見て

ほんの少し胸が苦しくなるのを感じた。

何だ、これ。




『天元は何が食べたい?』

「ふぐ刺し一択だな!」

『変わらないなぁ!!
じゃあこの間みつけた店にしようか?
美味しいと評判なんだって』




隠にお館様の屋敷から離れた所で降ろされ

夜でも賑わいを見せる街中を歩きながら話す。




「師範が良いならな!」

『私はどこでも構わないよ。
正直なところ、繊細な味はよく分からないし……』




申し訳なさそうに眉を下げる師範。

確かに師範は味覚が乏しい。




クソ、今日は師範の気にしてることばっかり

掘り返しちまってる。




「師範……」

『でも天元が美味しそうに食べる姿は見たいなぁ!
私も美味しいと感じるからね!』




バシィッと派手な音と軽い痛みが背中を襲う。




「痛っ!!何すんだ急に!!」

『あははっ!やっぱ敬語ない方が天元らしいよ!』




それに、と師範が手を伸ばす。

その手は俺の頬を軽く引っ張った。




『地味な顔してるんじゃないよ。
天元は……何だっけ、何かの神様なんだろ?』

「俺は派手を司る祭の神だ!」

『そうそれ!』




高らかに笑う師範を見て

俺の考えていた事を読まれていたのを察する。




『天元が悩むことないよ!
これは私の問題であって誰のせいでもない!
勿論、実弥のせいでもないからね』




ほら行くよ、と先を歩き始める師範の腕を掴む。




『どうしたの?』

「なら…………」




思わず手に力がこもる。




「そんな悲しい音させてないで話してくれよ。
師範が苦しんでんのは放っておけねぇ」




ピク、と師範の肩が揺れる。




掠れるような悲しい音に混じって

少し早くなった鼓動が焦っているのを報せる。




『…………これだから耳の良い奴は』

「飯はまた後日ってことで。
どうせ今日は"藤の花の家紋の家"だろ」




師範の手を引いて、人ごみを掻き分け歩く。

この近くにも家はあったはずだ。




『……』




黙ってしまった師範は

何とも弱々しく見えて仕方がなかった。




「ッ……」




少し歩みを速め

やっと着いた藤の家の戸を叩いた。

丗弐→←丗



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沙羅(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます!!宇髄さんカッコイイですよね……!!もっとカッコイイ宇髄さんを書けるよう頑張りますので、ぜひ続編の方もよろしくお願いしますー!! (2020年1月30日 21時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - コメント失礼します!宇髄さんは私の推しなので、すんごいかっこいいなあ…。とか思いながら見てます!頑張ってください! (2020年1月30日 21時) (レス) id: 4db94b3ad0 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - めぐちゃんさん» コメントありがとうございますっれ分かります…宇髄さんカッコイイですよね!もっと夢主を素敵な女性に書けるよう、頑張りますね! (2020年1月11日 14時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
めぐちゃん - コメント失礼します!!宇髄さんはカッコいいし夢主ちゃんもかわカッコよくて面白いです。頑張って下さい! (2020年1月11日 0時) (レス) id: 0087c5132c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年12月29日 21時

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