ひゃくに ページ10
no side
織田「それほどに哲学的な思考を
しているということは、仕事で失敗をしたのか？」
太宰「そう、そうなのだよ。失敗も大失敗さ」
太宰は唇を尖らせた。
太宰「囮作戦でね。
威風堂々たる益荒男が来るだろうと思って、
わくわくしながら待ち伏せしたのさ。
ところが現れたのは五円玉みたいに
ぱっとしない銃運びさんたちが十数名ときた。
がっかりしたから倉庫で罠を張って
包囲攻撃をしたら、泣きながら逃げていったよ。
おかげでまたﾀﾋにそびれた。詰まらないなあ」
織田「その連中はどこの組織だった？」
太宰「うちの元気っ子達が逃げそびれた奴を
捕虜室で小突き回してるから、
直に吐くんじゃないかな」
ポートマフィアには云い習わしがある。
『太宰の敵の不幸は、敵が太宰であること』。
太宰は、
織田「また傷が増えたな」
太宰「増えたねえ」
貴女『医務室の包帯が無くなる原因はこれか』
近頃、医務室で包帯が異常な減りをしているとか。
織田「その脚の怪我の理由は？」
指を差して尋ねた。
太宰「『不意の怪我をしないために』っていう本を
歩きながら読んでいたら、排水溝に落ちた」
適当な理由だった。
貴女『じゃあその腕の怪我は？』
太宰「車で峠をぶっ飛ばしていて崖から落ちた」
織田「ではその頭の包帯は」
太宰「『豆腐の角で頭をぶつけてﾀﾋぬ』という
自 殺法を試した」
織田「豆腐で怪我したのか？」
貴女『治くん…牛乳飲んでる……？』
Aが心底心配そうな顔で尋ねた。
太宰「豆腐を堅くするため、
独自の製法を編み出したのだよ。
塩で水分を抜いたり、重しを載せたり……
自前の厨房でね。
おかげで釘を打てるほど堅くなったし、
組織の誰よりも豆腐の製法に詳しくなった」
織田とAはほう、と呟いた。
織田「その豆腐はうまいのか」
太宰「悔しいことに」
不本意そうに顔をしかめた太宰。
太宰「薄く切って醤油で食べると、物凄くおいしい」
織田「うまいのか…」
貴女『トウフ凄い……』
織田「今度食べさせてくれ」
貴女『私も食べたい！』
Aが身を乗り出してそう云ったところで
入口の方から声がかかる。
坂口「お二人共…今のそれ、突っ込む所ですよ」
そこに居たのは学者風の青年だった。
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作者名：沙羅
| 作成日時：2019年5月13日 15時
