ひゃくいち ページ9
貴女side
深夜十一時。
私は"Lupin"の扉を開いていた。
太宰「Aさん!」
貴女『あれ、治くん来てたんだね!』
太宰「まぁね!」
うふふ、と二人して笑う。
私も座ろうと階段を降り切ったところで
背後でもう一つの足音がする。
太宰「やァ、織田作」
貴女『作くん!』
治くんが嬉しそうに云う。
作くんは軽く手を掲げて私と並ぶ。
座るか、そう云われ私も頷く。
作くんは治くんの隣に座る。
私も作くんの隣に座った。
織田「何をしていたんだ?」
貴女『何だか悩んでる様に見えたけど…』
マスターが私と作くんの前に酒杯を置く。
太宰「思考だよ。哲学的にして形而上の思考さ」
貴女『?』
織田「それは何だ?」
何だか難しい言葉が飛び出してきた。
治くんは少し考えてから答えた。
太宰「世の中の大抵のことは、
失敗するより成功するほうが難しい。そうだろう?」
織田「そうだ」
貴女『確かに』
私は頷く。
太宰「じゃあ私は自 殺ではなく、
自 殺未遂をすべきなのだ!自 殺に成功するのは
難しいが、自 殺未遂に失敗するのは
比較的容易い筈だ!そうだろう?」
作くんは蒸留酒を眺めてから 確かに、と呟いた。
貴女『未遂なら簡単かも?』
太宰「矢張りそうだね!
早速試そう。マスター、メニューに洗剤ある?」
マスター「ありません」
マスターは杯を拭きながら答えた。
太宰「洗剤のソーダ割りは?」
マスター「ありません」
太宰「ないのかあ」
織田「ないなら仕方ないな」
貴女『仕方ないねぇ』
作くんはぐるりと店内を見回してから
蒸留酒を一口飲んで治くんに尋ねた。
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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年5月13日 15時