検索窓
今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:16,233 hit

ひゃくじゅういち ページ19

貴女side



貴女『……失礼しました』



バタン、と重たい音を立てて

執務室のフレンチ・ドアが閉まる。



私は、人を殺 さない。

作くんと約束したんだ。



云い聞かせるように繰り返しながら

昇降機に乗り込む。



扉が閉まったのを確認して

私は背後の硝子窓の向こうに視線を向ける。



貴女『……作くん、何だか嫌な予感がするよ。
人を……殺 さないと、いけないのかな』




そう呟いた時、

視線が一段と低くなった事に気が付く。




貴女『あ…はは、足に力が入らないや……』




竜頭抗争の恐怖と後悔が蘇る。

この手で、私は人を殺 した。

血の滴るナイフを握っていた。




貴女『ッ……』



思い出すのが怖くて強く目を瞑る。

それと同時に昇降機の扉が開く気配がした。



貴女『降りないと……』



慌てて立ち上がろうとするも

足腰は小さく震えて力が入らない。



無情にも扉は静かに閉まろうとしている。



貴女『まっ……』



ガッ、と誰かの手が扉を抑える。

そのおかげで扉は閉まるのをやめ再び開き始めた。



織田「A?」


ヒョイと顔を覗かせたのは作くんだった。


貴女『作くん〜!』



心からホッとして思わず両手を伸ばす。

作くんは一瞬きょとんとした後

微笑んで私を抱き上げてくれた。




織田「体調が悪かったのか?」

貴女『うぅん…大丈夫だよ、腰が抜けちゃって』



作くんはそうか、と呟くと

私を抱えたまま歩き始めた。



貴女『うぅ…二十四にもなって情けない……』

織田「俺はAを二十四でも抱っこ出来て嬉しいが」

貴女『うっ…私も…嬉しいけどさぁぁ…』



サラッと作くんは恥ずかしい事を云う。

何となく作くんの顔を直視出来なかった。



織田「A、」

貴女『うぅ…何…?』



名前を呼ばれて顔を上げる。

意外と作くんの顔が近くにあって

心臓が飛び出そうになった。









.




作くんは何も云わない。

私も何も云わなかった。




.





ただ、互いの目を見て

同じ碧い瞳を覗き込んだ。





.








どちらともなくゆっくり顔を寄せた。









.









.









それが初めての接吻(キス)だった。

ひゃくじゅうに→←ひゃくじゅう



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
138人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:沙羅 | 作成日時:2019年5月13日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。