ひゃくはち ページ16
貴女side
リンタロウ医師は
目を細め、眉を寄せ、机に両肘をついて
顔の前で手を組んで、低くよく響く声で話し出す。
鷗外「─────却説」
織田「はい」
貴女『はい』
織田「織田君、A君。
君達を呼んだのは他でもない」
リンタロウ医師は鋭い視線を向けた。
もう私は数分前の事には触れないでおこう。
あれは幻覚だったのだ。朝の幻覚。
織田「はい」
鷗外「……織田君」
少しの間があってリンタロウ医師は云う。
鷗外「君は他人から『もっと突っ込め』と
云われた事は無いかね」
貴女『ふっ……』
織田「よく有ります」
作くんはリンタロウ医師の背後にいる
黒服さん達を見ていた。
黒服さんに視線を逸らされ
今度は私の方をそっと見た。
私もそっと視線を逸らした。
鷗外「兎に角、君はたった今此処に来た。
何も見ていない。善いね?」
貴女『私は?』
鷗外「……後でケェキあげるね」←
貴女『判った』←
ちょっと巫山戯ていたら作くんが
真面目に返事をしたので黙る。
織田「私はたった今此処に来ました。
首領には、幼女を脱がせて追い回しているのを
中断し、私の対応をして頂きました。
有り難う御座います。ご用件は何でしょう」
貴女『ふ、ふふ…』
もうやだ作くん最高!←
鷗外「……嘗て幹部の太宰君が云っていたな。
『織田作は他意と云うものが存在しない男で、
慣れるまでは大変だけど、慣れると寧ろ癒される』
と……今少し意味が判った」
貴女『あー…』
作くんが不思議そう顔をしている。
これは事実なんだよ作くん……
鷗外「それで、用件だったね」
咳払いをしとつして、リンタロウ医師は
銀色の葉巻入れを手に取る。
それから葉巻を一本取り出して
それを吸わずに持っていた。
鷗外「人捜しを頼みたい」
織田「人捜し、ですか」
人捜し…って私も?
作くんを手伝えってことかな?
織田「幾つか確認をさせて下さい。
首領が此処で直々に依頼されると云う事は、
尋常ならざる人物の捜索でしょう。私のような
一介の構成員では不足ではありませんか?」
鷗外「もっともな質問だねえ」
確かに作くんの階級では
弾除けだとか、そんな扱いだろう。
鷗外「今回の仕事は是非君に頼みたい。
行方不明になったのは、情報員の坂口安吾君だ」
私も、作くんも表に出して驚かなかった。
逆にそれがリンタロウ医師を満足させてしまった。
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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年5月13日 15時