い ページ2
no side
月が眩しい夜道を二つの人影が歩く。
一つは長身でもう一つは低かった。
静かに夜道を進み
時折、背の低い方が話しかけている様だった。
────
鏡花「明日は、私だけの任務だって」
貴方『存じております…』
鏡花「Aは、何か仕事あるの?」
貴方『
少女…泉鏡花はAと呼んだ男を見上げる。
鏡花「終わったら、豆腐が食べたい」
貴方『勿論です お嬢様。支度をしてお待ちします』
鏡花「……"お嬢様"は厭」
鏡花は拗ねたように呟く。
貴方『然し……これが癖になっておりまして…』
男が申し訳なさそうに眉を下げる。
鏡花「…偶には、名前で呼んで」
貴方『善処します』
頷く男に鏡花は満足そうに男の袖を引く。
鏡花「ちゃんと寝て、ね」
貴方『…!はい』
男は優しく微笑む。
貴方『お嬢様もごゆっくりお休み下さい』
鏡花「…判った。お休み、A」
貴方『お休みなさい』
男は深く頭を下げる。
鏡花は小さく頷くとポートマフィアの建物に入る。
それを見届けた男は
踵を返してゆっくりと暗闇に溶けていく。
────
鏡花「……」
芥川「……」
二人の間に沈黙が流れる。
芥川「一人なのか」
鏡花「さっき迄 一緒に居た」
芥川「…彼は何処に?」
鏡花「家」
芥川「そうか」
黒外套の男…芥川龍之介は
鏡花にそれだけ尋ねると踵を返す。
鏡花「……」
芥川「明日はしくじるなよ」
鏡花「……はい」
カツカツと靴を鳴らして歩く芥川は
携帯電話を取り出し誰かに掛ける。
鏡花はそれをぼうっと見た後
自分の部屋へと歩き始めた。
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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年4月29日 19時