八歩 ページ9
no side
とある喫茶処で中島は茶漬けを頬張る。
その様子を太宰、国木田、Aは眺めていた。
国木田が「理想」と書かれた手帳について
熱弁する間、Aは中島にとある事を尋ねる。
貴女『貴方…中島君、何故
中島「あ…っとAさん…
その…孤児院を追い出され横浜に出て来てから
食べるものも寝るところもなく…」
太宰「ふぅん。君、施設の出かい」
中島「出というか…追い出されたのです。
経営不振だとか事業縮小だとかで」
太宰「それは薄情な施設もあったものだね」
貴女『……酷いことするのね』
独歩「Aさん、太宰。
俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる
篤志家じゃないんです。仕事に戻りますよ」
中島「三人は……何の仕事を?」
太宰「なァに……探偵さ」
ポカンとする中島に舌打ちをして
国木田が「武装探偵社」だということを伝える。
それから太宰が鴨居が頑丈そうだの
首 吊り健康法は体に善いだのと話し始める。
国木田の万年筆が折れたのは云うまでもない。
中島「そ…それで探偵の皆さんの今日のお仕事は」
独歩「虎探し、だ」
中島「……虎探し?」
太宰が虎について話し始めると
中島の様子が変わる。
.
怯えて逃げ出す中島を国木田が押さえつけ、
座り直し話を聞く間もAは黙って見ていた。
中島「あいつ僕を追って街まで降りてきたんだ!
空腹で頭は朦朧とするしどこをどう逃げたのか」
貴女『…それ、いつの話かしら?』
やっと口を開いたAに中島は素直に答える。
中島「院を出たのが2週間前。
川であいつを見たのが───4日前」
貴女『………そう』
そしてAの思考を読んだかのように
太宰は中島に協力を頼む。
報酬に目のくらんだ中島は渋々ながら引き受けた。
ちなみに国木田は
太宰に渡された紙を社長に渡すべく戻っている。
──────
貴女『大丈夫よ中島君』
太宰「そうだよ。虎が現れても私の敵じゃない。
こう見えても『武装探偵社』の一隅だ」
中島「はは 凄いですね自信のある人は」
ぽつりぽつりと中島は云う。
しばらくそれを見ていた太宰は
不意に天窓を見上げる。
太宰「却説──────そろそろかな」
刹那、中島の背後で物音が響く。
中島「今……そこで物音が!」
太宰「そうだね」
中島「きっと奴ですよ太宰さん!Aさん!」
貴女『風で何か落ちたのよ』
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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年2月15日 22時