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後ろに三歩 ページ15

no side


貴女『なるべくお急ぎになって下さい』

森「私もう三十路で体力が……」

貴女『…そういうものなんですか?』

森「君もいずれ判るよ……」

貴女『そうですか。でも急いで下さいね』

森「鬼!」


マフィアの建物は広い。

首領の部屋までは長い廊下がある。


そして診察の時間は迫っている。

あと数分だ。


貴女『ああ、首領に叱られてしまいます』

森「私のせいにすれば佳いんじゃ?」

貴女『その手がありましたね』

森「あ、余計なこと云った」

貴女『森医師のせいにはしませんから
は・や・く!歩いて下さい。何度云えば……』

森「ご免って……」


そしてようやく

首領の寝る部屋へと着いた。


貴女『首領、遅くなりました』

首領「ご苦労…武者(ムシャ)……」

貴女『では失礼します』


彼女の苗字である

「武者小路」は長いため「武者」と

略されて呼ばれることもあるらしい。





首領「否…今日はお前も聞け」

貴女『…?はい、首領の御心のままに』


何を話すのだろうか、とAは首を傾げる。





森「お加減はいかがですか、首領」

首領「鏖殺だ」


いきなり物騒なことを云う老人。


熱に浮かされているのか、

はたまた本人の意思なのか。


それは分からなかった。



森「それは…非合理的です」

そう云うと森は首領の喉を掻き切った。


貴女『……』


森「首領は病により横死された。
私を時期首領にすると遺言にして」


森は話す。


森「君が証人だ。いいね?」


森は後ろを振り向く。

Aもほんの少し体を動かして後ろを見た。


そこに居たのは、

最年少幹部となる太宰少年だった。



────


貴女『これが目的でお時間をズラしたんですね』

太宰少年が部屋を去ってから口を開いたA。


森「驚かないし…止めなかったのは何故だい?」


貴女『真逆。とても驚いていますよ』

森「…そうかい?」



森は嗤う。

Aは黙って微笑した。

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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年2月15日 22時

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