夢の中の君は。 (ページ10)

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いつのまにか、重ねられた右手。

顔を覗き込むように私を捉える艶っぽい視線

＂…なんで、なる前提なんですか＂

必死に強がってやっと絞り出した答えを言う頃には
顔の温度は上昇しきっていた

＂ふは！確かにね！…じゃ改めて。
Aちゃん、俺の彼女になってください＂

アイドルなのに。

芸能人なのに。

付き合って未来は見える？

友達を騙すことになるかもしれない。

いろんな考えが浮かぶ中で、それでも、

＂は～カイトでよかったわ～まじで。
じゃなかったらこんなに仲良くなれてねーし＂

人によっては人の思い出に対して無神経だとも
捉えられそうな正直でまっすぐなところが
可笑しくて声を出して笑う

＂…何、そんなにおかしい？＂

＂ううん。ぜひ私でよければ海人さんの、＂

＂海人って呼んで＂

夢の話を知っておいて、少し意地悪なことを言う彼に仕返しをするように不意打ちで頬にキスをする

＂海人＂

＂ふふ、俺は夢の話も無理に忘れろとは言わない。
…だけど、もしその夢のカイトに会えた時に
それでも俺のそばにいたいって言ってもらえるように絶対に幸せにする＂

ヒモキャラとか、頼りないとか

私の知っている彼のアイドル像からは
想像もつかない、未来への約束に

もう、夢の中のカイトくんを追うのはやめよう

だけど願わくば

あの時、楽しい思い出をありがとうって

伝えることはできないのだろうかと

少しだけ胸が切なくなった