夢の中の君は。 (ページ39)

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「Aさん、こんばんは」

聞き慣れない声なのに親しみを込めたような呼び方に
背筋が凍りつく感覚に襲われる

恐る恐る振り返ると、

いつから後ろにいたのだろうか
あまり見覚えのない男性が笑顔で立っていた

「えっ、と…」

どちらさまですか、と聞こうとしたその時
勢いよく手首を掴まれる

「やだなぁ！いつもソイラテ買ってるじゃん」

その言葉に、
バイト先の常連のサラリーマンだと思い出す

同時に、手首に込められた力に危険だと悟った

「ちょっ、離してください…っ…！」

「最近、家に帰ってないよね？ずっと待ってるのに。
どこに帰ってるの？僕たち向こうの方でしょ？」

帰るよ、と意味の分からないことを言いながら
どこかへ行こうとするのに必死に抵抗する

だけど、成人の男性の力に敵うはずもなく
抵抗も虚しく連れていかれそうになったその時、

「…あの、何してるんすか」

勢いよく出てきた手が私の手首を解放させた

「…いってぇな！連れて帰ろうとしてただけだろ！」

「勘違いしてません？彼女、怖がってるでしょ」

私を背中で隠すように視界を遮られる

この声、間違えるはずもない

「宮近、さん」