No mouth to the dead～そして誰もいなくなる？ (ページ26)

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＿episode23 ページ26

＿side.春峰紫恩

さと「じゃあ、そろそろ行く」
紫恩「そう、気を付けてね」

そんな簡単なやり取りをしてさとちゃんと別れた。

なんだか昔の話をしてすっきりした気がする。

私はやっぱり誰かを殺す覚悟も殺される覚悟もないかもしれない。
でも決意してここまで来たのだ。
こんなところで諦められない。

だから、私なりに精一杯生きてみようと思った。

ピースに映る自分の顔を見つめる。
がんばろう、と心の中で意気込んだ。

暫くそうしてのんびり過ごし、少し喉が渇いたな、と椅子から立ち上がった、その時。

まず聞こえたのはザクッという布を切る音。

その直後に肉を突き破る音がした。

ワンテンポ遅れて激痛が襲い掛かる。

痛みに絶叫しようとしたが、恐怖からか上手く声が出せなかった。

口の中に生暖かい液体が広がっていく。

それはドロッとしていて、少し鉄の味がした。

口から吐き出される赤い液体。

それは白いフローリングの床を紅く染めていく。

背中に突き立てられたナイフ。
激痛が走るため振りむくことは叶わないが、刺されたという事実だけは理解できた。

なんで、どうして、いやだ、死にたくない

そんな思考が頭の中を埋め尽くす。

ナイフが体から抜かれる。また激痛が走った。

そしてそのまま首に濡れた金属が触れる感覚。

微かに聞こえた狂気を孕んだ少女の笑い声。

その直後、私の意識はブラックアウトした。

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＿side.影山さと

さっきの家に忘れ物をしてしまった。小走りで来た道を戻る。

家の扉を開くと、鉄の匂いが充満していた。

歩調をさらに早めてリビングに入る。

そこには、血の海に沈む、首と胴が離れた紫恩がいた。
思わず息を飲む。

近寄って見てみると、胸部にも刺し跡があった。
誰かに殺されたのか。

優しく撫でるように彼の瞼を閉ざす。

さと「……すぐ、慣れる、から……」

僕はまだ彼のぬくもりが残る椅子に腰かけ、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。

_____春峰紫恩死亡_____

_____残り17人_____