_episode13 ページ15
_side.杠 水蔵
_____悲鳴が聞こえた。
辺りはだんだん暗くなってきていて、空が燃えるように赤く染まっていた。
そろそろ夜を越す拠点を探そうか、と住宅街の近くにいた僕は、急いで走り出した。
悲鳴の発生源は一つの一軒家。
そーっと様子をうかがうと、家の外に一つの赤い塊が転がっていた。
紅。
きっと血の色。
そこで誰かが死んでいる、ということに気づくのに数秒かかった。
黄色いパーカーを着た、多分、男。
足は義足のようで、ズボンから金属が見え隠れしている。
そこまで考えて、やっと事の重大さを呑み込めた。
ヒュッと喉から息が出る。
傍らには男の子が立っていた。
どこか存在感が薄くて、幽霊みたいな子。
その表情は限りなく「無」に近く、それが更に不気味さを掻き立てていた。
僕が様子をうかがっていると、彼はゆらり、と、スローモーションにも見えるゆっくりとした動作でこちらを見た。
こちらに向かってくる。
だというのに、僕は死神の鎌にでも捕まったような気分になって動くことができない。
死にたくない、死ぬわけにはいかない。
そんな思いだけがふつふつと湧き上がってくるが、それでも足が動かない。
ついに彼が僕の前に立った。
ここで何もしなかったら死ぬ。
足が動かないなら、手を動かせ、口を動かせ!
そんな思いでやっと口から言葉を引きずり出した。
「____ねぇ、取引、しない?」
___________
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作者名:葉月/月のツッキー/陰鸚 x他3人 | 作者ホームページ:No.
作成日時:2022年6月9日 19時