お隣、37日目 ページ37
▽
「お前、あの日のこと、覚えとるか?」
突然そんなことを聞いてきた侑君に、私の心臓はドキリとする。あの日というのは、私が考えている『あの日』と一緒だろうか。
…いや、それ以外ない。だって侑君と過去に出会ったのはあの一度きりなはずだから。
中々口を開かない私に侑君はしびれを切らしたのか、「なあ」と声をかけてくる。私は胸が熱くなるのを感じた。
「……あ、つむくん」
「なんや」
「あの日、っていうのは、その」
上手く言葉が出ない。
まさか侑君も覚えていたなんて、思いもしなかった。情けない姿を知られているという恥ずかしさと、覚えていてくれたことの嬉しさが混じって、ごちゃごちゃだ。
「…お前が泣いとった、あの日や」
「っ、あああぁあの!その、えっと」
「あれお前やろ?なあ」
「………そ、そうだよ」
恥ずかしくて顔を上げることができない。上からふってくる侑君の声が耳に入るたび、羞恥心がどんどん大きくなっていく。
「おい、顔隠すなや」
そう言って私の腕をつかむ侑君。ゆっくりと手を顔からどけると、侑君とばっちり目が合ってしまった。逸らしたいのに、逸らせなかった。
侑君は数秒の沈黙の末、口を開く。
「俺が言うたこと、忘れたりしてへんやろな」
「言った…こと?」
「俺、ゆうたよな、お前のせいやないって。
良い子ちゃんもやめえって、言うたよな?」
確認するみたいに言ってくる侑君に、私は逃げ出したくなる。
侑君はきっと、怒っているんだ。私がなんにも変わってないから。未だに全く成長してない、うじうじした弱虫な私に腹が立っているんだ。
そう思うと怖くて、でも逃げ出すこともできなくて、私は視線を下に向けた。
「目ぇ逸らすなや」
「……だ、だって侑君怒って、」
「は?怒ってへんからこっち見い」
ゆっくりと、再び侑君の顔に視線を戻す。
侑君の目は星の光でキラキラと輝いていて、また目をそらしたくなる。なんで、侑君の目はこんなにキラキラしているんだろう、こんなに綺麗なんだろう。
あの日と変わらない、優しくて強くて、カッコイイ侑君。
私は違う。私の目には星の光なんて入らない。
悲しいことばかりが頭の中を埋め尽くして、胸が締め付けられるみたいに痛くなる。なんでこんなに、私は辛いんだろう。
私ばかり辛いわけじゃないのに、自分ばかりが辛いみたいな顔をして、最低だ。
侑君の目に映った私は、きっと酷い顔をしている。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです!そちらの曲も聞いてみたいと思います! (2020年5月27日 13時) (レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます!!OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました!聞いてみてほしいです! (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬田 | 作成日時:2020年5月15日 20時