⑵ ページ22
皿を洗っている手が捕まり、袖も強制的に捲られる。
手が少し宙を彷徨ったかと思えば、意を決したように包帯を巻き取り始めるウパさん。
「え…これ、って…」
刃物で切り付けたような無数の傷跡に、ウパさんの血の気が引くのが見てとれて、思わず笑ってしまう。ああ、やっぱそうですよね。
「自分にやられました。…無駄に察しのいいウパさんならわかってるでしょうけど。」
やめてください、と自分の手首を掴む手を振り払って再び皿洗いへ戻る。気味悪がられるのなんてわかってた。なのに、ウパさんにそんな反応されると辛い。胸の奥がキュッと締まる。痛いな。
「ぁ…な、何かあったらいつでも頼ってください、ね。」
そんなこと、引き攣った笑顔でそう言われたって。
その言葉には答えず、洗い終えた皿を渡すことでその場を濁した。
***
皿洗いを終えてもラテさんは上の空だ。腕の傷を見てしまってから、ずっと。
そのまま覚束ない足取りでソファに腰を下ろし、ぼーっと宙を見つめるラテさんにどう声をかけていいのかわからなかった。
そのまま徒に時間が過ぎていき、ついにラテさんが声をあげる。
「…気味が悪い、と思ったでしょう?」
そんなわけない、そう言おうとして口を開くと、ラテさんはそれに被せるように言葉を綴った。
「そんな慌てないでくださいよ。…いいんです。でも、見てしまったんですから、」
不自然にそこで言葉を切り、優しく微笑んだ。その顔は儚くて、どこかへ消えてしまいそうで。しかし、そんな考えとは裏腹にラテさんは近づいてきて、何がしたいのか嫌でもわかって。なんとか胸を押し返して抵抗するが、その手も絡め取られてしまいなす術がなくなってしまう。
鼻と鼻が触れて、いよいよだとキュッと目を閉じてそれに備える。…が、いくら待っても唇に触れるものはなく、恐る恐る目を開けるとクスクスと笑うラテさんがいた。
「…責任、取って欲しかったんですけど。ウパさん面白すぎてどうでも良くなりました。」
あんなに恥じていた自分を殴りたい。ラテさんのあまりにもカラッとした態度に少し腹が立つ。絡まれた指はするりと解かれ、前屈みになっていた体勢もいつの間にか元に戻っていた。
「このことは秘密ですよ。2人だけの秘密。」
人差し指を口元に当てて悪戯っぽく笑った。
その姿に先ほどのような儚さは感じ取れず、安心すると同時に少し物足りなさを感じた。
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おとうふさん(プロフ) - 非ログの洗剤さん» 了解です!私もシチュ指定してなかった(てか思いつかなかった)ので全然大丈夫です。いくらでも待ちますので〜 (2022年12月4日 17時) (レス) id: b48d62d9e1 (このIDを非表示/違反報告)
非ログの洗剤 - おとうふさんさん» ちょっとシチュエーションがあまりにも浮かばないのでリク遅くなるかもです…! (2022年12月4日 5時) (レス) id: f4ac54675a (このIDを非表示/違反報告)
非ログの洗剤 - おとうふさんさん» リク&感想ありがとうございます!飲み物に何か仕込んでる系は自分の性癖であり十八番ですからね…!!お褒めいただき嬉しいです!!リクも書かせていただきます〜 (2022年12月1日 21時) (レス) id: f4ac54675a (このIDを非表示/違反報告)
おとうふさん(プロフ) - あと、リクエストです!ちょ、この前の「狂気に呑まれる」の黄緑さんのヤンデレがほんとにドストライクだったんであれの続き、みたいな感じがみたいです。細かい設定とかはないんですがお願いできますか? (2022年12月1日 21時) (レス) id: b48d62d9e1 (このIDを非表示/違反報告)
おとうふさん(プロフ) - え、あぁ、おぉ(?)え、ちょなんですか?!私最後までお茶コンビがお茶会してほのぼの〜で終わると思ってたのに!思ってたのに!急なヤンデレみたいなやつぶっ込んできてぇ!大好きですよぉ〜!(情緒不安定ですみません)もぉ、ほんとに、ありがとうございます…! (2022年12月1日 21時) (レス) @page45 id: b48d62d9e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:賞味期限切れの洗剤 | 作成日時:2022年6月8日 15時