あなたが、【煉獄杏寿郎】

あなたと単純 ページ5

もちろん恥ずかしくても離して、とは言えない。


好きな人に手を握られているのだ。

嬉しくてにやけそうな顔を我慢する。


手を触られながらだいぶ時間が経った。

モミモミと指を揉んだり、手のひらをなぞったり
真剣な顔で私の手を見つめる。

何がしたいかわからないが、どことなく楽しそうだ。


しかし、手は自分の1番見て欲しくはないところ。

これでも手入れをしているつもりだけど
どうしても冬から春にかけては手荒れが酷くなる。


自分の手が嫌いだ。



これ以上みられて汚いと言われれば心は折れてしまう。
まあ絶対に彼は言わないけど。


杏寿郎くんに離して、と言わねば。



『手、あまり見られたくないからそんなに見られると恥ずかしいなあ』



ははと乾いた笑いが出る。

再度ビクッとあなたは反応した。


うわ、私今普通に離してっていえばいいのに謎に遠回しでいっちゃった。


後悔しながら付け加えるように『ごめんね』とそっと彼の手から手をぬこうとする。


しかし、ぎゅっと手を両手で捕らえられた。
そして顔を上げたあなたの大きな目が私を見つめる。



「君が努力している証拠だ。恥じることなどない。
俺はこの手に支えられているのだから、 君の手が好きだ」


その言葉を言ったあと、にこっと笑う。


私の手が好き、彼はそういったのだ。


私はなんて単純な女なんだろうか。
彼の言葉で自分の手が好きになった。


耳が熱くなるのを感じる。
なんでこう、あなたは褒めてくれるのか、

嬉しくて心臓が止まってしまう。



『あ、ありがとう。私も杏寿郎くんの手、好きだよ』



ゴツゴツした、傷だらけの、誰かを守る大きな手。

ぎゅっと手を握り返す。

まあ、手だけじゃなくてあなたも好きだけど。
なんて心の中で付け足す。


「む！嬉しいな！ありがとうA！」



私の手から片手を離し、
頭をわしゃわしゃと撫でられた。


もう片方の手は何故か握られたままだ。
不思議に思い、
ちらっと彼の顔を見ると耳が少し赤くなっていた。


照れている。



.....なんと愛おしいのか、

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