あなたと抱擁 ページ18
昨日から何かがおかしい。
明らかに私が理解出来る容量ではない。
理解するのにだいぶ時間を要した。
そう、今私は好きな人に抱きしめられているのだ。
理解した途端、ぶわわっと全身が熱くなる。
昨日とは違い、座ったままの抱擁だ。
今は完全に彼に体重をかけている状態だ。
申し訳なくなって少し体を引くと今度は彼が少し、私に体重をかけ、首元に顔を埋める。
『ほあぁ....』と情けない声が出てくすくすと彼に笑われる。
いや笑ってる場合じゃないよ、どうしたんだ。急に。
『れ、煉獄殿、どうされたんだね』
「君こそどうした!言葉遣いが変だ!」
『.....なんで抱きしめてるんでしょうか』
「幼馴染だからいいだろ!一緒に風呂も入ったことあるじゃないか!」
『そ!それは子どもの時の話でしょ!』
「今もそんなの変わらん!!」
『そうだけど!』
そうだけど。
そうじゃない!!
あの頃は小さかったしまだ恋というものを知らなかった!
杏寿郎くんは口喧嘩が弱いと思ったけど、私の方が弱いみたいだった。
ぐぬぬと行く場所のない手が空を切る。
「........A」
『な、なんでしょう』
「撫でてくれないか」
『え"!?!?』
急な要求に女性らしからぬ汚い声が出た。
ちらっと彼を見ようとするがぎゅうと強く抱きしめられた。恥ずかしいのかな。
目の端に映る彼の耳が赤くなっている。
........なんと愛らしいのだろうか。
この可愛い幼馴染をどうしてくれよう、などと考えながらそっと頭に手を置く。
ぽふぽふと頭の形を確かめるように撫でる。
ふわふわだ。昔と変わらない。
あなたの髪に触れたのは何年ぶりだろうか。
ふとすりっと彼に擦り寄られ、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
か、かわいい。
心臓がうるさい。
ドキドキしている胸の音が彼に聞かれていないか焦る。
「A」
『な、なに?』
「俺がこうして甘えることが出来るのは君だけだ」
ああ、なんでそんな嬉しい言葉を言ってくれるのか。
甘えてくれているのか。
嬉しくて泣きそうになった。
心臓が鼓膜にあるのかと言うくらい、自分の心臓の音がうるさい。
「ああ、心地いいなあ」
耳元で優しい声がした。
真っ赤になった顔が見えないように、わたしも彼の肩に顔を埋めた。
すごく暖かい。
あなたを撫でる手は止めなかった。
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ねむこ(プロフ) - 柑橘蛍さん» 柑橘蛍さんコメントありがとうございます〜!わかります.....推しは尊いですよね....読んでくださってありがとうございますー! (2021年2月12日 12時) (レス) id: 81a8bcf75d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 今日も今日とて推しが尊い…! (2021年2月10日 0時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 晶子さん» はじめまして!コメントありがとうございますー!記憶したい!?!そこまでですか〜!?感謝です... (2021年1月17日 0時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
晶子 - 初めまして!何ですかこの神作品は!?最高です( ; ; )何度も読み返してしまいます。。!!もう記憶してしまいたいくらい!! (2021年1月15日 20時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 沙希さん» こちらこそありがとうございます...!!!!!!長編なので大変でしょうけど最後までよろしくお願いします...! (2021年1月10日 13時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむこ | 作成日時:2020年10月28日 8時