あなたが、【煉獄杏寿郎】

あなたと失恋 ページ13

『杏寿郎くんは？好きな人いるの？』


なんてつい、口から出てしまった。

聞かなければよかった、と直ぐに思った。


これでいる、と言われたら私はきっとショックで立ち直れないだろう。



「ああ、いる」



時が止まったような気がした。

頬を若干赤らめ、照れくさそうに目を細めて笑うあなた。


ああ、そうか、いるのか、好きな人。


止まっている息を鯉が餌を求めるように吸う。
涙が出るのを堪える。


『へ、へえそうなんだ、意外だなあ』

「そうだろうか！照れくさいな！」

『っ....どんな人なの？』


きっとその人より私の方があなたの事、好きだよ。
そして大事で、大切で、
あなたのこといっぱい知ってるよ。

なんて、生意気なことを考える。


「優しくて、気が付いたら隣にいてくれる、花のような人だ。」


愛おしそうに彼はそう言う。


『そっか、綺麗な人なんだろうね』

「うむ！綺麗だ！」



素っ気ない返事をしてしまう、


杏寿郎くんが好きになった人だ。

きっと素敵な人なんだろうなあ。
同じ鬼殺隊の人だったりして。

前に花の呼吸のことを聞いたからその人なんだろうか。花のような人だから。


顔に出ないようにするが、おそらく出ているだろう。


「........よもや.............脈アリか......」

『え？』

「いいや！なんでもない！」


何を言ったか聞き取れなかったが、誤魔化された。


彼ははっとした瞬間、どんどん顔を赤らめる。
口元を照れ隠し、私から目をそらす。

なんと愛おしい。
その顔を私がさせたかった。


それにしても、長年片思いをして失恋とはなかなかにしんどいものだ。


いっその事あの宇髄さんに嫁ごうか、と考えたが利用するのは私自身も許せないので一瞬で却下した。



幼馴染と恋バナをするとは思っていなかったので、心の準備をしていなかった心はズタズタだ。



目を伏せて、彼を視界に入れないようにする。

泣いてしまいそうだったから。




君だ、と言って笑ってくれたら、



そんな無駄なことを考えた。

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