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15,溢れ出た想いに ページ15

首領が用意してくれた薬を飲んでいると扉をコンコンと叩く音が聞こえた。







「A 、俺だ。入っていいか?」








「うん。どうぞ」








入って来た中也は眉を下げて険しい顔つきで私を見る。








「大丈夫なのか?」








「まぁ、何とかね。首領を呼んでくれて有難う。
凄く助かった」








「呼んだのは俺じゃねぇ。お前の処に行ったらもう首領がいた」








「そうなんだ。何にしろ凄く助かった。有難うね」









「別にどうって事ねぇよ。それより電話で云った事どう云う意味だ」








「私なんか云ったっけ?」








「惚けんな。自分の事を馬鹿だのなんなんの云ってただろ」








「嗚呼、あれの事ね。大した事じゃないよ。仕事でミスっただけ」








其の答えに苛ついたのか、少し力を込めて私の肩を掴み、自分の方へ向かせる。








掴まれた肩が少し痛い位の強さだった。









「嘘つくな。お前がそんな事であんな弱音吐くわけねぇ。・・・・・・太宰と別れでもしたのか」








「流石中也だね。中ってる」








「何で別れた」









「別れたかったから別れた。ただそれだけ」








「本当に円満で別れたならそんな顔はしてねぇよ」








「・・・・・・・・私そんなに酷い顔してるの?」








「嗚呼。今にも死にそうな顔してるぜ。本当に何があった」







「・・・・・・・・ねぇ中也。私何で別れちゃったのかな。

何で死んじゃうからって諦めちゃったんだろう。

如何して最初からあの女と闘うこともしなかったのかな。

如何して、死ぬのが私なんだろう。もっと、もっと生きていたかった。

もっとあの人にずっと・・・愛されていたかったっ・・・」









一つ、また一つと零せば抑えていた私の想いは堰を切ったように溢れて止まらない。








彼にはあの女がお似合いなのだし、今更云っても
自分の寿命が永くなれないのは分かっている。









それでももう嘆かずにはいられなかった。









こんな私なんて見るのもきっと嫌だろうにも関わらず中也は私の身体を抱き寄せて何も云わずにただ傍にいてくれた。









一度溢れてしまった感情を抑えるには彼に縋るしかなくて、申し訳ない気持ちと同時に今の自分の心に腹が立って仕方なくてまるで子供の様に大きな声を上げて私は泣きじゃくった。

16,彼の想い→←14,医者として、首領として



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ユリア(プロフ) - すごく泣きそうになりました!でも、とてもいい結末だなーと思いました。 (2023年2月3日 23時) (レス) @page40 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
小指よくぶつける - めっちゃ泣いた。……!! (2020年8月27日 23時) (レス) id: eb8322ff5b (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみる(プロフ) - 粉雪餅さん» 嬉しいお言葉有難うございます!楽しんで頂けて私もとても嬉しいです!有難うございました! (2019年9月21日 13時) (レス) id: 752a7ff7e6 (このIDを非表示/違反報告)
粉雪餅 - ゆうみるさん» 面白かったです!とっても泣きそうになりました!小説面白かったです (2019年9月21日 8時) (レス) id: bd26a6d5e5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみる(プロフ) - ななさん» 最後まで見て下さったんですね!!有難うございます泣 本作品楽しんで頂けたでしょうか?次回作はまだ思い付いてはいませんが次がありましたらまた見て頂けると嬉しいです!本当に有難うございました! (2019年8月26日 11時) (レス) id: 752a7ff7e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆうみる | 作成日時:2019年7月21日 8時

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