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「あれやな、」
『ん?』
Aの初めてを終え、服を着てから同じ布団に肩を並べる。思い出したように呟いた俺の言葉にAは空気が抜けたような返事をする。
「あの契約書、もう必要ないな」
『あ、』
「破る?」
『ハルくんに任せる…』
ああ、もう眠いんやな。閉じそうな目をパチパチして頑張りながら返事をしたAはもうほぼ意識レベルゼロ。
「A、寝たらまた襲うで」
『えっ、や、ちょ、』
「あ、起きた」
『もう…心臓何個あっても足りないよ…』
「でも気持ちよかったやん?」
『………否定しません、』
「ふは、」
『ねえハルくん、』
「ん?」
『ハルくんと初めて会った日ね、あたし札幌ドーム行ったんだ』
天井を見つめながら、何年も前のことを思い出すように話すA。懐かしそうなその眼差しは、何だか嬉しそうにも見えた。
「そうなん?」
『初めて見た、プロ野球選手ハルくんは、ホームラン、打ったの』
「…あ、」
そうや、あのホームラン。オープン戦やったけど、めちゃくちゃ手応えよかったやつ。そうか、A見てくれてたんやな。
『あれがなければ、きっとあたしはこの道を選んでいなかった』
「…初めて聞いた、そんな話し」
『初めて言った、』
「じゃあ、俺そん時ホームラン打ってなかったら今はなかったってことやな、」
『そうだね、』
「あん時の俺に感謝やな…」
ぎゅうっとAを抱きしめる。思いっきり息を吸うと、自分と同じシャンプーの匂いがした。ああ、何だか落ち着く。
『ハルくん、』
「ん?」
『おやすみ、』
「ん、おやすみ」
ただただ今は、幸せを噛み締めて眠ろう。
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いちか(プロフ) - 菜々さん» ありがとうございます★楽しんで頂けて嬉しいです◯Twitterも是非よろしくお願いします★休みながら頑張りますね! (2019年8月25日 0時) (レス) id: 659890526f (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - 花音さん» ありがとうございます★とってもとっても嬉しいお言葉ありがとうございます!!もう少しだけこの作品も続きますので引き続きよろしくお願いします★ (2019年8月25日 0時) (レス) id: 659890526f (このIDを非表示/違反報告)
菜々 - 毎回楽しく読んでました。とっても素敵なお話しでした。次のお話しを読む事ができるのを楽しみにしてます。Twitterもフォローさせて頂きます。ちょっとはゆっくり休んでくださいね (2019年8月24日 20時) (レス) id: f90c817e3e (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - いちかさん、本編終了おめでとうございます(^^)最後まで素敵なお話でした。本当にいちかさんのお話大好きです!番外編やまた次のお話、とっても楽しみにしています。また素敵なお話を読めるなんて嬉しいです☆これからも頑張ってください。応援しています。 (2019年8月24日 8時) (レス) id: a0401679ea (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます◯更新頑張ります!またよろしくお願いします★ (2019年7月30日 20時) (レス) id: d72f7e0d49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちか | 作成日時:2019年7月15日 13時