薬指の秘め事 (２)

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「卓さん、いいっすか？」

「？」





Aは北海道に帰り、俺たちは埼玉へ移動した夜。卓さんの部屋に行き、中に入れてもらった。





「どうしたん？」

「卓さんには、ちゃんと話しておこうと思って」

「…あのモデルとの話？」

「はい、」

「聞きたく無いって言ったら？」

「勝手に話します」

「はは、強引やな」





いいよ聞きたい、と笑ってくれた卓さんは怒っていなかった。部屋の奥にある椅子に座り、俺はゆっくりと話す。





「リカとは、バラエティ番組で出会って、連絡先を交換しました、」





−西川選手ですよね！わたしファンなんです！−





リカから話しかけてきて、連絡先を交換して、そこから東京に来る度に何度か会うようになった。





−ねえ遥輝くん、あたし遥輝くんのこと好き−





会ううちに、お互いがお互いに惹かれてて、俺も同じ気持ちで。迷うことなく付き合って、誰にも言わず付き合った１年。





−…撮られた、この間会ってた時−





それでも、某雑誌に撮られて、リカの事務所にもばれて、これでもかってくらい交際に猛反対されて、俺たちは別れなきゃいけなかった。





「リカのために、もっと有名になって、絶対迎えに行くって…そう約束したのに」





あれから数ヶ月で、リカには新しい彼氏ができたらしい。デートしているところを、また撮られていた。





「…」

「Aに出会ったあの時期は、ちょうどリカから連絡が来ていて」





−あたしは遥輝くんだけだよ。信じて−





返事は１つも返していない。でも、電話も何度も来ていた。でもその度に俺の心はえぐられていくばかりで、それなら忘れてしまった方がいいって。





「咄嗟に思いついたのが、契約結婚でした」

「…そっか、」

「自分のこと守るために、Aのこと利用した」





結果的に、俺の結婚報道が出てからは、リカから連絡も来なくなり、そして今まで平和に過ごしてきた。





「でも俺…今、本気でAのこと好きっす、」

「…」

「卓さんにも、渡したくない」





俺は、Aのことを、ちゃんと愛したい。



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