記憶(R.Miyadate) (ページ7)

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(R.side)

京では、想像以上にピリピリした日々を送っていた。

いつ、どこで戦いになるか分からない。そんな、死と背中合わせの時もあった。

そんな時、力をくれたのは。

“涼太さん”

愛しい人との思い出だった。

時々文を送った。
一度だけ返事が来たけど、そのあとはどれだけ送っても返ってくることはなくて。

嫌な予感がした。

三月の予定が長引いてしまい、桜の花が散り藤の花が咲く季節にやっと江戸に帰ることができた。

Aちゃんは元気にしているんだろうか。文の返事が来なかったのはなぜなのか。会って話を聞きたい。早く彼女に会いたい。
そう思い、江戸に着くと家に帰るよりも先に彼女が養女になった庄屋を訪ねた。

「嘘だろ…。」

庄屋の看板ははずされ。
もぬけの殻だ。

一体、これはどういうことなんだ。

「親父さんはいるか？」

茶屋を訪ねた俺は思わず大きな声を出してしまった。

「…、宮舘様！お久しぶりでございます。」

「Aちゃんはどこにいるんだ。庄屋はどうした。」

茶屋の主の話では庄屋は多額の借金で経営が傾き、彼女は店に戻ってきて働いていたが。ある日突然店を辞めると言ったきり、行方がわからなくなったのだと言う。

「そんな…なぜ私に知らせてくれなかったんだ！」

「申し訳ございません。あの子が心配をかけたくないと言いまして…。」

心配をかけたくない？
現に今俺に心配をかけているじゃないか。

「彼女の行き先は？心当たりのところを教えてくれ。」

「それが…あの子は親を亡くしてここ以外に親戚もいないんです。どこへ行ったのかは私どもにも分かりませんでして…。」

「なぜ止めてくれなかった？」

「申し訳ありません。」

女が一人でどこへ行くというのだ。

京になど行かなければ良かった。
いや。
京に旅立つ前に祝言を挙げておけば彼女は家で俺の帰りを待ってくれていたはずなんだ。

どうして。こんなことになってしまったんだ…。

しかし、このままここで押し問答していてもらちがあかない。
照に聞こう。

「…取り乱してすまなかった。また、何か分かったことがあったら教えてくれないか。」

俺は主に念を押して茶屋をあとにした。

「…本当のこと、言わなくていいんですか？」

「このまま行方知れずになったと言った方が、宮舘様も傷つかずに済むだろう…。」

「そう、ですかねぇ。」

主と店の者のやりとりは、俺に届くことは、なかった。