記憶(R.Miyadate) (ページ1)

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記憶ページ1

…

いつもの朝。

涼太の隣で目が覚めると。私はいつも決まったように彼に寄り添っている。

出会いは、私が大学生で涼太が高校生の時だった。バイト先の全国チェーンのコーヒーショップに涼太がよく来るようになって、レジで会話をすることが増えて。

“好きなんです”

真っ直ぐな目で、そんなこと言われて。免疫のなかった私は困ってしまって。

“高校生でしょ？ちょっとそれは”

って断ったら。翌年うちの大学生になって現れてもう一度告白された。

なんとまぁ、すごい情熱だったわけで。それから7年、付き合っている。

朝ごはんどうしようかな。なんてぼんやりと考えていた私は、その時ふと繋いだ手の感覚にやっと意識が向いたんだ。

…これ。

離れないように、お互いの指を絡ませて繋ぐ、心中するときの手だ。

ふざけて子供の時にやって親にひどく怒られたことがある。

どうして、この形…。

怖くなった私は手を振りほどいて朝ごはんの準備を始めようとベッドを出た。

「…おはよう。」

「おはよう。涼太寝癖ついてる。」

かわいい。
普段は凛々しくて隙のない感じなのに。こんなときは、無防備で唯一年下だと感じる。

「起こしてくれても良かったのに。」

「…、なんか、早く目が覚めちゃって。」

「ふーん。」

どこか行ったかと思って寂しかったよ、と。涼太は私を抱き締めた。

「涼太？」

「…疲れてんのかもね、俺。」

「大丈夫？」

「うん。」

重ねた唇の温度はいつもと変わらなくて。その時感じた不安を忘れてしまっていた。

あんなに。
大切なことだとは思いもせずに。