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冷笑を浮かべたクロコダイルさんは、その言葉通りに本当に独りで生きてきたのだろう。
《一人は寂しい》__その恩師の言葉は私にだって当て嵌る。
決してひとりじゃ生きていけないわけじゃない。誰の温情も受けずに生きていくことだって可能だ。
でも、私はひとりぼっちは嫌だったから。
誰かと一緒にいたくて、仲間を見つけた。
ただ、この人は、それに慣れてしまったのだ。
そして、それができるだけの強さがあった。
「…なんであの時、ジンベエに言われた場所にいなかった」
『_』
「他にも疑う理由ならごまんとある。
一つ一つ聴きてぇか?」
やばい、冗談抜きでめっちゃ疑われてる。
鉤爪の先がくい込み血が流れ、一周まわって冷静になって状況を再認識し焦りだした。
クロコダイルさんの生き方に私はとやかく言えるほど偉くはないし、それに、この状況でただほんとにすれ違っちゃっただけなんですなんて言い出したらマジで殺される。こんな時に何してんだって。
やっと本気で慌て始めて、どうやってこの状況を抜け出そうかとぐるぐる考える。
でもシロなものはシロなのだ。
弁明も何も無い。
『…私はただ本当に、エースさんを助けたいだけです』
「それを信じる根拠がねぇだろ」
『疑われても構いません、殺されるのは、ちょっと困りますが』
少しだけ緩んだ首元の拘束に息を吸うと、酸素が周り脳が正常に機能し直す。
『…“約束”です。
私は、この戦争に於いてあなた達を裏切らない。
あなたの目的の邪魔もしません。
その代わり、あなたも私の目的の邪魔をしないでください』
「はっ、海賊に約束を求めんのか?」
『これも私の能力の一種です。
互いにこれを反故にすれば、ペナルティが生じる。
…これでも信じられませんか?』
細めた瞳に、呪いが映る。
繊細な糸に似たそれはゆっくりとたぐられ、結ばれ、紡がれる。
__"縛り"が成立した。
『…あの、わかって頂けたなら離してくれませんか』
「あ?俺はなんも言ってねぇだろ…ああ、そういうことか、それもわかんのか」
忌々しげな舌打ちと共に解放され、ヘリの上に降ろされる。
首に感じる生暖かい感触を手の甲で拭えば、べっとりと肌を赤が濡らした。
ちりちりとした痛みに顔を顰めると、クロコダイルさんは大して悪びれる様子もなくソールを鳴らして船首の方へと歩き出した。
「テメェがどこの誰かは知らねぇ」
『…』
「せいぜい足引っ張んじゃねぇぞ」
瞬きをした次の瞬間に見えたのは、海上ではありえない砂が舞う瞬間だった。
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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時