4.苦笑い。 ページ4
「アンタ、Aって名前なの?」
松本さんが、苦笑いのような微妙な表情で問う。
「え?...はい、朝霧Aです」
「マジか...アハ」
彼が力無く笑ったと同時にエレベーターが1階に着き、その扉が開いた。
松本さんが2人に向かって「おい、行くぞ」と声を掛ける。
「うん、今行く。じゃあね、Aちゃん」
「Aちゃんバイバイ!今度ご飯でも行こ!」
「こらこら、斗真。どこでナンパしてんの」
「ナンパじゃねーよ、交流!」
「それがナンパなんだろ」「社交的なだけー」とか言い合いながら、2人は松本さんと一緒にエレベーターへ乗り込んだ。
顔を合わせた日から彼らは毎日、私に声を掛けてくれた。
小栗さんは「この雑誌読むー?」なんてファッション誌の最新号をくれるし、生田さんの「今度ご飯行こ!」は挨拶代わりだ。
だけど、松本さんだけは良くも悪くもテンションに変化が無く、掛けられた言葉も「おはよう」「こんにちは」「お疲れ様」程度。
そして彼らはいつもラフな格好。
一体、何の仕事をしてるのか謎。
一応父親に「『澪』って会社、怪しい会社じゃないよね?」と確認したら「あー、あの顔が良い奴らな」と笑ってた。
顔が良いのは私も分かってるんですけど。
モデル事務所かな。
やっぱりあのクオリティはモデルでしょ。
モデル事務所だな。間違いない。
・
ある日の休憩時間。
急にかき氷が食べたくなって、ビル1階の喫茶店へ行った。
子供の頃からここのかき氷が大好き。
「こんにちはー」
「お、Aちゃんいらっしゃい!」
「かき氷くださーい」
「いつもので良い?」
「うん、いつもの」
長年来てるから、一番クーラーが当たる席も知ってる。カウンターの端っこ。
そこに座ってボーッと天井を見上げた。
ウッディな内装、シーリングファンが回るのを見詰める。
「はい、お待たせ」
「ありがとー!」
マスターが私の前にかき氷を置く。
赤でも黄色でも青でも無い、真っ白の氷。
その氷の中にスプーンを差し込んで、1口食べる。
「おいしー...生き返る」
別に死んでた訳じゃないけど。
「いらっしゃいませー」
お客さんが来た気配を感じて、かき氷をシャコシャコしながら店の入口に目をやった。
「あ」
「あ」
サングラスを外したばかりのその人と目が合う。
「こんにちは、松本さん」
「こんにちは。休憩?」
「はい」
松本さんは「アイスコーヒーで」と言いながら、2席空けた私の隣に座った。
7349人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時:2018年8月11日 13時