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6.光。←8.25 ページ6

半分程度になったかき氷は、甘い氷水。
これも好きだ。
スープを飲むようにスプーンで掬って、飲んでいく。


「いくつ?」

松本さんはコーヒーを飲むちょっと前に声を掛けて来たらしく、私がそっちを見た時彼はストローを咥えていた。

「私ですか?歳ですか?」

うん、と彼はコーヒーを飲みながら頷く。

「22歳です」
「って事は大学生?」
「はい」
「若いねー」

やれやれ、って感じで首を小さく振ってマスターに向かって「若いって良いね」って言ってる。
そう言う松本さんも充分若そうなんだけど。

もう少し大人になったら私も『若いって良いね』って思うのかな.....って、もう既に高校生に向かって『若いって良いねぇ』って言ってるわ!私!
既に若さを羨ましがってるわ!


「じゃあ、管理人代理は夏休みだけのバイト?」
「バイト...というか」
「あー、自分ちだから手伝いか」
「んー...一応賃金は発生するからバイトなんですけど.....」
「なに、歯切れわりぃな」

松本さんが眉間に皺を寄せた。
でも別に怒ってる顔じゃなくて、私に続きを促すような表情。


「研修...と言いますか...」
「研修?」
「今のうちから仕事を全部覚えていけってゆー、父親の命令でして...」

言おうか言うまいか、考えてしまう。

ガラスの器の中の氷水から、氷が消えた。甘い水だけ。
こうなると、あんまり好きじゃない。


「研修命令って事は、親父さんの跡を継ぐ感じ?」
「あ...はぁ、一応...」
「次期社長ってワケか」
「やっ、でもっ!ちゃんと入社試験もされて、普段の生活態度も見られて、それにうちの父親って結構シビアで...!」
「何をそんな必死になってんの」

彼は、呆れたように息を吐いた。
私も、溜息のような重い息を吐き出す。


「親の...七光りって言われるのが、嫌で...」
「何で」
「何でって...凄いのは親で別にお前は凄くないって言われてるのと同じだし...」
「そう言われるのは仕方ないじゃん。七光りなのは間違い無いんだし」

シラッと言われてさすがにムッとしたし、顔に出たはず。
そんな私を見て松本さんは「じゃあ今のアンタは親父さん以上に凄いわけ?」と、少し笑った。


「まだ何にも出来ない子供が、もう既に軌道に乗ってる会社の社長候補になれるなんてどう考えても七光りでしか無いだろ?」
「.....」

その通りだ。
私自身の力では、この年齢で会社の立ち上げなんて出来ない。

正論すぎる言葉に、悔しいけど何も言えない。

7.ハードル。→←5.かき氷。



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橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72  
作成日時:2018年8月11日 13時

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