５６話 ページ8
アタシはそっぽを向いた鶴丸の様子に小さくため息を吐いてから、盃に注いでいた酒をグイ、と飲みほした。
暫くの間黙り込んでいた鶴丸だが、じぃと見つめるアタシの視線に負けたのか、終いには本当に小さく声を漏らした。
「…どうして分かったンだ？」
「すぐには気づかんかったさ。あの時、内番服に着替えて来てたろ？ありゃやられたねェ！んっはははッ！」
酔いが回っているから、何時もより声が弾むし笑い声が混じってしまう。しかもゆっくり沢山飲むことも久しぶりだ、勘弁してほしいものだけど。少し楽しくなってしまいタシタシ、と床を軽く叩きながら話を進める。
「アンタの体格からして、似た奴は数名程度いるっちゃあいる。服装で判断着くとも思ったが内番服で来られちゃあ、混乱したさね。アンタが驚いたときに出したあの声と髪型が決定打さ」
「鼠小僧のような格好でもして表に出れば…審神者、きみも驚いたか？」
「おやァ、アタシに一杯食わせたいッて？１００年たっても無理だろうよ」
そう、亀甲を手入れに向かったときにこっそり来ていたのは鶴丸国永。
内番服で来ていて、最悪影越しに見られても分かり辛い様にしていたものの…ま、アタシにはバレちまったようさねェ
しかし、一発でわかったかと言われたら答えは「否」。変なトコロ頭回るンだから、身バレ対策を少なからずされてたのは、こっちも一杯食わされたな…
それに、アタシが鶴丸だと最初思えなかったのはもう一つ理由があって……
「にしても、どうしてアンタがアタシ達に味方してくれてンだい？あった当初、アンタが言ってた通りにアタシに何かしてやる義理なンてないだろうに」
そう、どうしてここまで鶴丸が肩入れしてくれているのか……否、肩入れというか仲良くしようとしてくれているのは嬉しいのだけども。
再度酒を飲み下しながら月を見上げれば、薄くかかった雲に覆われているから、ほんのすこしばかり届く光は薄くなる。
「俺は、本当はあんたに敵対心は持ってないンだぜ」
「………はっ？」
鶴丸から発せられた言葉は、アタシの想定範囲外で思わずカシャン、と盃を落としてしまっていた。
酒は入っていなかったから零して無駄にすることは無かったけど…
「あァ…汚れちまったよ、もう。……で、そりゃ本当なのかい？」
地面に落ちた盃を持ち上げてほんの少しついてしまった土を払い落す。欠けてしまっていないかどうかを確認しつつ、酒瓶の栓を閉めた。
ゆっくりと夜は廻りだす…
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病蛟(プロフ) - 勇者の人さん» お褒めの言葉をいただきありがとうございます…自分自身も楽しみ、かつ読者にも楽しんで感動して頂けるような小説をモットーに書いていますので、とてもありがたく思います。体を気にかけていきつつ投稿させていただきますので楽しみにしていてくださると幸いです。 (2021年9月22日 21時) (
レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
勇者の人(プロフ) - 文章が綺麗でとても読みやすく、読んでいて感情が揺さぶられたりと素晴らしい作品ですね。応援しています、これからも無理しない程度に頑張ってください。 (2021年9月22日 2時) (レス) id: 0ba614db75 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - もっちーさん» 一期一振に関する誤字を教えていただき有り難う御座います。修正作業に取り掛かります故…これからもこの作品をどうぞよしなに、楽しめるような続きを投稿させていただきます。 (2021年9月11日 22時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
もっちー(プロフ) - はじめまして！続き楽しみに待ってます！！それと一期が一護になってます! (2021年9月11日 19時) (レス) id: 5828451b09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：病蛟 | 作成日時：2021年8月18日 23時
