52話 ページ4
「実はね、ご主人様たちが部屋に入って来た時にもう起きていたのだけど…」
「なるほど、言い出すタイミングを見失った、ッてわけかい」
「こっちは吃驚したと!布団だし終わって振り返ったらきっちり正座しとったばい…」
「ふふふ、驚かせてしまったかな」
アタシが少し部屋から出ていたときの事を話しながら場を和ませていく。
話をしている間の亀甲の表情はほかの奴らに負けず劣らずいい顔をしてはいる。本当に心の底からアタシがこの本丸の審神者になったことが嬉しいような…
アタシ自身がそう見えているだけかもしれないが、嬉しく思っちまうねェ
少したってから、亀甲はさて、とでも言いたげにアタシの横にある箱に視線をむけた。
「その箱、何はいってたんだい?」
「こっちがアンタを手入れしに来ることが分かってたらしいね。手入れ道具一式さ」
箱をするりと撫でながらそう答える。今のところこの手入れ道具一式を届けてくれた刀剣が誰なのか、わからない。
あの体躯からして、あと少しにまでは絞れるけど……どれもアタシに其処迄良い印象は抱いてないだろ。あァいや……一人接した奴が…
確か、あの体躯にあの声…は…
そう考え事を続け、思い出す直前の事。自身の前にずぃ、と一本の刀が突き出された。
それは、亀甲が帯刀している、亀甲自身。鞘にもヒビが入っているし、組紐は解れて居たり血がにじんでいたり……痛々しい。
「僕のご主人様は君だけだ。手入れを拒む理由なんてないよ…してくれるかい?」
「あ、嗚呼…勿論さ。というより、此処へは手入れの為に来たわけだし…」
今まで手入れだとか、そういう刀剣自身に関わることをするたびに一悶着あったものだから、こうもすんなり行くとなると少し驚いてしまう節があった。
慎重に亀甲貞宗を受け取り、鞘から刀剣を引き抜く。あらゆるところにひびが入り、刃毀れがしている様子から、亀甲が痛みを感じて居たらどれだけ苦しんでいたのだろうか…
そっと刀剣に指を這わせてほんの少しずつ、時間をかけて霊力を流し込んでいく。その間、誰も何も喋ろうとはしなかったが、
「それに、万全の状態でなければ、ご主人様からあんな事やこんな事をしてもらえないからね。」
「ッ…やば…うぐッ」
「あ”ーッ!Aがぁ!」
という不意に亀甲が零した独り言はアタシの集中力を乱すのに最適であり、霊力の波が乱れたアタシは見事に流し込む霊力量をミスって、自分自身に跳ね返ってきたのは言うまでもない。
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病蛟(プロフ) - 勇者の人さん» お褒めの言葉をいただきありがとうございます…自分自身も楽しみ、かつ読者にも楽しんで感動して頂けるような小説をモットーに書いていますので、とてもありがたく思います。体を気にかけていきつつ投稿させていただきますので楽しみにしていてくださると幸いです。 (2021年9月22日 21時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
勇者の人(プロフ) - 文章が綺麗でとても読みやすく、読んでいて感情が揺さぶられたりと素晴らしい作品ですね。応援しています、これからも無理しない程度に頑張ってください。 (2021年9月22日 2時) (レス) id: 0ba614db75 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - もっちーさん» 一期一振に関する誤字を教えていただき有り難う御座います。修正作業に取り掛かります故…これからもこの作品をどうぞよしなに、楽しめるような続きを投稿させていただきます。 (2021年9月11日 22時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
もっちー(プロフ) - はじめまして!続き楽しみに待ってます!!それと一期が一護になってます! (2021年9月11日 19時) (レス) id: 5828451b09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:病蛟 | 作成日時:2021年8月18日 23時