６９話 ページ21
そう告げれば、数珠丸は静かに首を縦に振ッた。
「勿論、私からもその話はする心算でしたから……心配しないでください。私とて、あの状態を見てではこれからもお願いしますとは言えません。貴方の部下のお方が持ってきてくれた情報をもとに、私たちも何とかしてみますので。今は、彼方の方を…」
「…ッ有難う、数珠丸。…そう、さねェ…アタシも、長らくアンタらに迷惑かけられない。しっかりと、復帰はさせてもらうさ。その時まで…頼ンだよ。ンで……彼方ッて……？」
優しい言葉にこちらを気遣う態度に、再度ホッとした感覚を覚える。どうやら、数珠丸たちの方でも部下の情報を元に捜索を続けるようだッた。いつまでも彼らに任せッきりにするワケにもいかん。アタシも…ひとつ、蹴りを付けないといけないもンだ…。
そして、数珠丸の顔を向けた方向を追ってみれば、部屋の隅にちょこん、と正座をしているお小夜の姿。
「……お小夜…？」
「ええ、貴方が倒れてから、少し様子を見に来ていまして。今はあそこに。貴方が連れてきた子、でしょう？」
数珠丸の言葉を片隅に、ふらりとお小夜の方へと足を進めた。
静かに部屋の隅に居るお小夜はじぃッと虚空を見つめているようで。その目は生気があるともないとも言える。これは何があったのだろうか……
ゆっくりと近づいても何か嫌悪感を現す様子もない。前はアタシが視界に入るだけでもひょいッと隠れちまったりしていたのに……
相手の反応をうかがいつつ、横に腰を下ろした。
それでもお小夜は何も反応を示すことは無くて…
だけど、アタシが何か言葉をかけてやッても、多分だが反応は返してくれはしない。なら…相手から話だしてくれるのを待たないと、だ。
数分、数十分…？わからない。でもアタシ達の回りだけ、静かに落ち着いた空気があった。
「……僕は」
「お」
小さく呟かれたお小夜の言葉。ぽつりぽつりと少しずつ語りだされる。
「貴方が倒れた後、あの池に入ろうとしたんだ。死のうとした」
「………うん」
「僕は前の本丸で所謂初鍛刀として顕現された。初めて会ったときから主は恐ろしかった。でも、それが愛だッて言われてたから…信じて疑わなかった。最初、は…僕は、復讐に使われる刀だから、こういうものも、そうなンだッて。主が愛だと宣言した通り、主は愛を僕にくれたんだ……“道具として扱う”ッて愛を。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 320人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
病蛟(プロフ) - 勇者の人さん» お褒めの言葉をいただきありがとうございます…自分自身も楽しみ、かつ読者にも楽しんで感動して頂けるような小説をモットーに書いていますので、とてもありがたく思います。体を気にかけていきつつ投稿させていただきますので楽しみにしていてくださると幸いです。 (2021年9月22日 21時) (
レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
勇者の人(プロフ) - 文章が綺麗でとても読みやすく、読んでいて感情が揺さぶられたりと素晴らしい作品ですね。応援しています、これからも無理しない程度に頑張ってください。 (2021年9月22日 2時) (レス) id: 0ba614db75 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - もっちーさん» 一期一振に関する誤字を教えていただき有り難う御座います。修正作業に取り掛かります故…これからもこの作品をどうぞよしなに、楽しめるような続きを投稿させていただきます。 (2021年9月11日 22時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
もっちー(プロフ) - はじめまして！続き楽しみに待ってます！！それと一期が一護になってます! (2021年9月11日 19時) (レス) id: 5828451b09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：病蛟 | 作成日時：2021年8月18日 23時
