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百二十六振り ページ6

「…」
手伝い札を使った。襖を開け放つ。
「…大将、何だ。随分性急な……」
「失礼は承知で言うけど、早く自室に戻ってほしい」
「?」
薬研は首を傾げた。しかし__すぐに頷く。
「分かった」
私の横を通り抜けると、秋田の居る襖を開け放った。
「秋田、分かってるな」
「勿論です、薬研兄さん」
秋田と薬研が並んで出て来る。
「小夜、行くぞ」
「分かった。けど……」
小夜が私を見上げる。それから、山姥切国広に目を落とした。
「山姥切は?」
「部屋に寝かせてきてもらっても良い?」
「うん」
小夜が山姥切国広を受け取る。両手でしかと胸に抱いていた。
「廊下じゃなくて、外から行った方が良いと思う。鉢合わせると、多分、まずい」
「分かりました」
三人が玄関で靴を履く。
「さて、それじゃあ俺達はお暇するが……大将、一人で大丈夫か?」
靴を履き終えた薬研の問い掛けに、私は頷いた。笑ってみせる。
「うん。これは……私の問題だから」
強がりの笑みは、きっと歪だ。
『……』
三人は顔を見合わせると、互いに頷き合って駆けていった。
気持ち悪い顔をしてただろう。何を言われるか分からない恐怖に引き攣った笑みの筈だったから。
「ハァー……スゥー……」
深呼吸をした。
非があるのは自分だ。何を言われても私には反論する余地が無い。というか反論する権利は無い。全て自分が悪いんだ。
せめて、せめて__精一杯の、謝罪をしよう。齢十四の小娘の謝罪なんて、取るに足らないものだろうが。
廊下に正座をした。
ひんやりとした感触が、今はどうにも居心地悪かった。
砂が微かに散らばっているのか、妙にざらざらしている。
こんな所で座り込む事など今まで無かったから、気付かなかったんだ。
私の呼吸する音しか聞こえなかった筈が、気付けば床を踏みしめる大多数の足音が混じっていた。
それは次第に近付いてくる。
伴って私の心音が大きくなる。あぁ、まるで心臓が耳の傍にあるかの様だ。
そして、視界に入ってきたのは__白。
その姿を認めた瞬間、不意に心音が一際大きく鳴った。
その白は次第に輪郭を成していく。
背後に多くの色を従えて、二メートル先で止まった。
「……」
私を静かに見下げる双眸に、息が詰まる。
「…………鶴、丸」
唇が震えていると、その名を呼んだ時に初めて気付いた。
__いや、唇だけじゃ無い。
全身が震えている。
えも言われぬ、恐怖に対して。

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設定タグ:刀剣乱舞 , 山姥切国広 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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ナガミ(プロフ) - 睦月乃さん» 御意見、有難う御座います!良い話だなんて…創作者として冥利に尽きます。大変嬉しいです!!私も長い話の方が好きなので、もうなんなら文庫本になるくらいに書きたいと思います!! (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Lupineさん» 御意見を下さり、有難う御座います!占ツクでは余り長い物を見た印象がないため、長編は嫌われるだろうか…そんなにこの話に興味はないだろうか…と悩んでいたので、長編が好きだといってくださって嬉しいです!もうとてつもなく長く書きたいとおもいます!!! (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
睦月乃(プロフ) - 私は長い話の方が好きです! いつも良い話をありがとうございますこれからも頑張ってください応援してます (2018年9月14日 17時) (レス) id: fab13ef4ac (このIDを非表示/違反報告)
Lupine(プロフ) - 私は長編小説を読むのが好きなので長く書いてくださると嬉しいです!これからも応援してます! (2018年9月14日 7時) (レス) id: 4de4e1b52c (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - マナマナさん» コメントありがとうございます!!!そう言って頂けてとっても嬉しいです!!!!!!もう本当に嬉しいです...ありがとうございます(´;ω;`)これからも好き勝手更新するので、お暇でしたら是非見て下さい!!!本当にありがとうございます!!!! (2018年9月1日 18時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナガミ | 作成日時:2018年4月4日 21時

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