百二十五振り ページ5
こんな子に、戦いを強いているのか、私は。
「わっ…？！…下ろして、貴方の手を煩わせる程の怪我じゃな……」
「無理はしてほしくないの。この程度の距離くらい、抱かせて」
私の言葉に、小夜は黙り込んだ。すぐに、小さく「分かった」と呟く。
手入部屋の布団に寝かせた。小夜は何も言わないで目を閉じた。
襖を閉め、直れ、治れと強く願った。物音はすぐにし始めた。この音を聞くと、常々安堵する。
すぐに手伝い札を使った。
愛染達の手入もしなければならないから。
山姥切国広の寝る襖を開け、一度顕現させる。
万が一が、怖いから。直っていなかったら、怖いから。
服の破れはもう無い。見るに耐えなかった傷も同じだ。
だが、山姥切は動けない。動かない。
重傷を負った刀剣男士達は、高レベルになればなるほど手入に掛かる時間が長くなり、手入後に目覚めるまで時間が掛かる様になる。
誰かが言っていた。
『これは、刀剣男士達が人に近付いているからだ』と。
傷の直りが遅くなるのは、人に似てきているからだ、と。
「…………」
山姥切を刀に戻す。
そっと、抱き締めた。
廊下に出れば、小夜はもう歩いている。
「薬研、秋田、手入部屋に入って」
「おう」
「はい」
二人は確かに、小夜より目立つ傷は少なかった。傷が少なくて良かった。勿論一番良いのは、傷付かない事だけれど。戦場でそんな生温い事は口にしない。出来ない。だってこの戦いは、命のやり取りなのだから。
二人は襖を閉めた。
直れ、治れと願おうとして、袖を引っ張られる。
「山姥切は…？」
私を見上げ問い掛けてきたのは、小夜。
心配する様に、すぐに山姥切国広に目を向ける。
「大丈夫。傷は直ったよ。後は……起きるのを待つだけ」
「そう…なら、良かった」
浅い溜め息を零す。
安堵し切った表情を確認してから、私は願った。
襖の向こうで音がし始める。
「…さて、手伝い札を…………」
途端に、言葉に詰まった。
小夜が「どうかした？」と問い掛けてくる。
「気が……」
大勢の気が、此方に向かってきているのを感じ取った。
勿論それは、純粋な刀剣男士達の気だ。混じったものは何も無い。
だが＿＿言い知れぬ恐怖が身体を支配した。
そしてすぐに、その恐怖を理解する。
自分の行動に対する責任を問われると気付いたからだ。
止める鶴丸を怒鳴りつけ、手を振り払い、合戦場へと出向き、挙句山姥切に重傷を負わせた。
「……スゥ…」
私は一つ、深呼吸をした。
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ナガミ(プロフ) - 睦月乃さん» 御意見、有難う御座います！良い話だなんて…創作者として冥利に尽きます。大変嬉しいです！！私も長い話の方が好きなので、もうなんなら文庫本になるくらいに書きたいと思います！！ (2018年9月16日 0時) (
レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Lupineさん» 御意見を下さり、有難う御座います！占ツクでは余り長い物を見た印象がないため、長編は嫌われるだろうか…そんなにこの話に興味はないだろうか…と悩んでいたので、長編が好きだといってくださって嬉しいです！もうとてつもなく長く書きたいとおもいます！！！ (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
睦月乃(プロフ) - 私は長い話の方が好きです！ いつも良い話をありがとうございますこれからも頑張ってください応援してます (2018年9月14日 17時) (レス) id: fab13ef4ac (このIDを非表示/違反報告)
Lupine(プロフ) - 私は長編小説を読むのが好きなので長く書いてくださると嬉しいです！これからも応援してます！ (2018年9月14日 7時) (レス) id: 4de4e1b52c (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - マナマナさん» コメントありがとうございます！！！そう言って頂けてとっても嬉しいです！！！！！！もう本当に嬉しいです...ありがとうございます(´；ω；`)これからも好き勝手更新するので、お暇でしたら是非見て下さい！！！本当にありがとうございます！！！！ (2018年9月1日 18時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナガミ | 作成日時：2018年4月4日 21時
