百二十二振り ページ2
｢っ…｣
一瞬、鶴丸が怯んだ。手の力が緩む。
咄嗟に、鶴丸の手を払った。
｢あっ……｣
部屋の窓へと走り、屋根に飛び出す。
｢おい、きみ！！｣
部屋の窓は小さく、体躯のでかい鶴丸が出るには時間を要する。
タタタと、屋根を走り抜けた。
正門へと辿り着き、風を受けて地面に降り立つ。足裏が砂利を踏み締めた。
｢主様？！｣
掃除をしていた今剣の、私を呼ぶ声を無視する。
第一部隊の皆の元へ、そう願いながら、門を潜った。
眩い光に目を瞑る。誰かの呼ぶ声が聞こえた気がした。
勿論、それはすぐに聞こえなくなったけれど。
｢……っ｣
瞬間、私の肌に触れた、不快な空気。湿気を多く孕んだ、纏わり付くような空気。
目を開き、確認する。
余りに暗く、目で辺りを見る事が難しい。
だが、止まっている時間が惜しい。とにかくと、走り出す。第一部隊の気を探す。
照る月の微かな明かりに、目が慣れてきた。
此処は、京都。池田屋事件、当日の。
私が走っているのは、路地。
夜故に人通りが少ないのが、救いだ。
皆の気が近付くと同時に感じるのは、時間遡行軍の気。
速度を落とす。バレないように。
徐々に減っていく、時間遡行軍の気。
「ハァ…はっ……っ！」
夏の暑さも、空気も、苦手だ。少し動くだけで、体力を消耗させられる。思考が働かなくなり、木偶の坊になる。
皆の気が、あと少しという所まで迫った。
時間遡行軍の気は＿＿もう、無い。
倒しきったのだろう。
誰も、怪我は無いだろうか。
極度の緊張、不安、焦り。慣れぬ格好で走り、暑さにやられ、朦朧とする意識。
荒い息を落としながら、歩いた。
建物の影から、気を感じる道を盗み見る。
数十メートル先に、山姥切を見つけた。
「山姥切…！！」
堪らず駆け出す。
全員の無事を確認しているのだろうか。目立つ白い布は、こちらに大半を見せている。それが、風に靡いた。
「……！なっ、主？！！」
少し離れた場所からする聞き慣れた声に安堵した。
と同時に、裾を踏み付ける。
「あっ…」
無様に倒れ込んだ。
身体は土だらけ。手には砂利が食い込んで痛みを訴えてくる。
だが＿＿今は、それさえ気にならない。
上半身を起こして、「えへへ」と堪らず笑った。
微かな月光でも分かる、六人の姿。怪我の様子までは分からずとも、確かにそこに存在している、という事実を見る事が出来た。
あの時の様子から、最悪の結果が脳裏に過ぎったが＿＿どうやら、要らない心配だったらしい。
「…あぁ、痛いなぁ」
手の砂利を払った。
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ナガミ(プロフ) - 睦月乃さん» 御意見、有難う御座います！良い話だなんて…創作者として冥利に尽きます。大変嬉しいです！！私も長い話の方が好きなので、もうなんなら文庫本になるくらいに書きたいと思います！！ (2018年9月16日 0時) (
レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Lupineさん» 御意見を下さり、有難う御座います！占ツクでは余り長い物を見た印象がないため、長編は嫌われるだろうか…そんなにこの話に興味はないだろうか…と悩んでいたので、長編が好きだといってくださって嬉しいです！もうとてつもなく長く書きたいとおもいます！！！ (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
睦月乃(プロフ) - 私は長い話の方が好きです！ いつも良い話をありがとうございますこれからも頑張ってください応援してます (2018年9月14日 17時) (レス) id: fab13ef4ac (このIDを非表示/違反報告)
Lupine(プロフ) - 私は長編小説を読むのが好きなので長く書いてくださると嬉しいです！これからも応援してます！ (2018年9月14日 7時) (レス) id: 4de4e1b52c (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - マナマナさん» コメントありがとうございます！！！そう言って頂けてとっても嬉しいです！！！！！！もう本当に嬉しいです...ありがとうございます(´；ω；`)これからも好き勝手更新するので、お暇でしたら是非見て下さい！！！本当にありがとうございます！！！！ (2018年9月1日 18時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナガミ | 作成日時：2018年4月4日 21時
