笑顔のキミが好き【千】

再び ページ11

千が恋愛する役はしたくないと、おかりんに言った。
私はこれからヤスのCMのポスターとパンフレットの撮影の為、事務所でメイクしながら聞いていた。

２年後には硬派な正統派イケメンで売って定着するのだから、いいだろう。

千が硬派で正統派イケメンか。
万が聞いたら笑うだろうな。

初の全国ツアー前から万には会ってない。
どうせ万の事だから、私の顔が違っても契約を知ってるし、演奏を聞けば分かるだろう。

てか、千の事を好きになったなんてバレたら何て言われるんだろう。

想像つかない。

「あ、でもAとの恋愛なら受ける。」

『は！？』

「え！ユキ、それって･･････」

「うん。Aに宣戦布告した。」

「きゃー！！」

百が乙女の様に頬に両手をあてて叫んで私を見る。
その視線、余計だよ･･･

「A、覚悟しててね？」

千が嬉しそうに私に言って近づく。

『近寄らないで。』

冷たく言っても千の表情は変わらない。
代わりに千の後ろで、百が軽く睨んできた。

いやもう、どうしろって言うの。
そりゃ私が素直に、私も好きだよ、なんて言ったら即付き合うことになるだろう。

いや、怖い。
色々失う気がする。

百は千の事をジェントルマンだとか言うけど、私は思ったことは一度もない。
こんなに押しの強いジェントルマンなんて世の中いる気がしない。

顔がいいのは分かる。
でも顔は、百の方が好み。
というか好きなタイプは元々百だ。

･･････ファン心理だよね。
万にしかいえないけど。

そんな事を考えてると、千が顎を触ってきた。

『な･･････っ』

「役とはいえ、もうキスしたからいいよね？」

『え･･･っちょ･･････っ』

近寄る千の顔。
耐えられなくて目をギュッとつぶったまま、千の手を払った。

心臓飛び出る！

え、何。

いつも百って、千にこんな気持ちになってんの！？

『おかりん！カオルちゃん現場で待ってるよね！行こう！』

ガタッとイスから立って、おかりんに早口でまくしたてる。

急いで事務所を出る。
おかりんもついて来てくれた。


「ユキ、前に半分本気で半分冗談って言ってたけど、今日は本気でしようとしたね？」
「うん。もっと押すことにした。」
「さっすがユキ！超イケメンだよ！」
「Aの好きな相手だけ知りたいな。」
「そのうち分かるよ！オレ応援する！」
「ありがとう、モモ。」

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