【アイナナ】この道の先に。 (ページ46)

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仕事で少し遅くなっても、たっくんを怖がる人がいるから、前のように気軽に迎えに来てもらうわけにいかなくなった。
そのせいで言われるようになった言葉。

“男と飲んできたの”
“バイト先で男とイチャイチャしてるんじゃないの”

“何でそんなこと言うの？”

もう、誤解されて嫉妬されてるんだと思えなかった。
疲れて、バイト先の友達に泊めてもらったりしたけど、すぐにバレて謝りに来た。

“ひどいこと言ってごめん。”

“好きすぎておかしくなっちゃうんだね。”と言ったバイトの子は、笑ってた。

それを学習して出来るだけ地味にしても彼は変わらなかった。

私が暴力を振るわれるわけじゃない。
でも何も悪いことしてない誰かに被害が及ぶ。

３回目の謝罪の時、このままじゃダメだと思った。
それ以上に、自分の中に恋愛感情じゃない情と、恐怖で縛られてることに気づいた。

たっくんは私の気持ちを救ってくれた。
たっくんはいつでも優しかった。
たっくんは私のことを凄く好きでいてくれた。

大事にされてないわけじゃない。
ただ、想いの重さと独占欲が、私には耐えられなかった。

先輩のことをたっくんは知ってる。
でもこの町のどこにいるのかは私もたっくんも知らない。

それ以上に危ないのはきっと、バイト先だ。
たっくんと私の連絡先を知ってる、共通の知り合いがいるから。

バイトを辞めて、たっくんが大学行ってる時に家出して。
バイト先の人とは連絡を絶って、先輩に連絡をした。

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『･･･多分、たっくんと付き合ってから、私に近寄る人が少なくなった理由も、そこにある気がする。女の人には別に何もないんだけど･･･。もう多分、優しいからとかそういうの考えた時点で、きっと恋愛の好きじゃなくなっちゃったんだと思う。嫌いじゃないけど、人に迷惑かかるのは嫌だ。』

先輩は黙って頷きながら聞いてくれた。

『先輩にはなんて連絡あったの？』

「ん、Aから連絡あったかっていうのと、どこにいるか知ってるかって。連絡はあったけど、会ってないからどこにいるか分かんないって答えた。」

『別れたって聞いてたのに、変だって思ったよね。』

聞くと、んー･･･と考えるように拳を顎に触れた後、先輩は苦笑した。

「こっちで再会した時から変だと思ってたよ。別れたから家を出たとかまでは分かるけど、バイト先まで変えて友達も頼らないって、どう考えてもおかしいでしょ？」

ああ、言われてみれば。