【アイナナ】この道の先に。 (ページ40)

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「何。ジッと見て。俺に惚れちゃった？」
『･･･残念ですね･･･』
「･･･悪口なのはわかったよ･･･」

口を開かなければイケメンで、さぼり癖がなければ仕事も完璧で、言うことないのに。

･･･いや、そこまで性格は知らないけど、私の事情を知っても働かせてもらえることには感謝してるし恩は感じるけど。

「･･･Aちゃんは彼氏作んないの。役でもさ、送り迎えしてくれる奴。」
『いませんねー。』
「モテるでしょ。」
『外しか見ない人たちからのは、モテるとは言いません。』
「へえ。」

店長は感心したように目を見開いて、棒付きの飴を口に入れた。
タバコ、我慢してるんだな、この人。

律儀。

『･･･例え好きな人がいたとして両思いだとしても、解決しない限り彼氏にはなり得ないし、巻き込めません。それに･･･まだ･･･恋は･･･』

歩きながら視線を落とす。
カリッと音がして店長を見ると、飴を少し噛んでいた。

「･･･ま、そうだな･･･」

それ以上お互いに話さずに駅についた。

「帰って怒られるかねえ？」
『あはは。今度フォローしときます。』
「気い付けて。」
『はい。ありがとうございます。』

電車でアパートの最寄り駅に着いて自転車で帰る。

まだ暫くは安全だった。

二次抽選も落ちて、職場の人も落ちたらしくて、ライブの次の日の朝一のニュース観るしかないとか言ってて、テレビないからそれすら無理やわと、１人凹む。
ネットニュースが一番速報で出るかもって言われて、それで知ればいいと思っていた。

こんなの、先輩と再会する前の私じゃ考えらんない。

アイドルにキャーキャーなってるのとは明らかに違うけど、端から見れば同じだ。

「TRIGGERもIDOLiSH7もライブあるって！行こう！」
「行く行く！ZOOLはライブ速報ないね･･･テレビに力入れてるのかな？ライブしてほしい！」

【超リア充･･･】

職場の人たちは、アニメにゲームにアイドルに大忙しだ。

何事もなく、先輩との約束の日が来た。

アパートの近くの個室居酒屋。

『･･･ねえ、先輩。』
「ん？」

一通り注文を終えてから、思ったことをそのまま口にした。

『なんで先輩って、□さんですか？とかって、言われないっていうか、バレないの？』
「え？今さら･･･？･･････さあ？髪切ったから？」
『それでも普通バレるよね･･･』

目の前の先輩は、確かに長かった髪をバッサリ切った姿で現れた。

再会した時と同じ。
誰かわからんかったわ。