【アイナナ】この道の先に。 (ページ29)

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胸に手を当てて、恋する乙女のように幸せそうに語る百さん。

こっちが照れそう。
ごちそうさまです。

つか先輩、めっちゃ顔赤い。

百さんと千さんと先輩と一緒にタクシーに突っ込まれた。

『ファン？先輩、何してたの？』

「昔何してたのかも知らないんだ？言ってもいい？」
「いいよ。」

「音楽だよ。ライブハウスでやってたんだ。オレの姉がファンで、最初は姉に押し切られる形で行ったんだけど、オレもファンになって。」
『へぇ。いつ頃ですか？Re:valeがファンなんて凄い。』

「あはは、違う、違う！オレが高3ん時で□が高1ん時！Aちゃんは中学生かな？でもオレが見たのが3周年だから、□が中2ん時には･･･」
「うん。やってたね。でもAと夕方以降会うって事はないし、おばあさんの事もあるから黙ってた。」

そういえば、上京して音大付属高校行くって言ってたなぁ。

『辞めちゃったの？仕事は、それとは違うの？』
「お！初めて興味持ってくれた！」

先輩が嬉しそうに笑う。

『別にそこまで興味なかったわけじゃないんだけど･･･』
「分かってるよ。私が言いにくかっただけ。」
千「ああ、テレビ嫌いだって言ってたね。」

まあ、わかる。
テレビ観なくなった位だし。

百「Aちゃんは、□と前に食事とか一緒の時って、誰か知らない人から声かけられたりしなかった？□が知らなさそうな人。」

「ないね。」
『ありませんね。』

先輩と一緒に即答する。
百さんは、うーんと顎に手を当てて考えるように口を開いた。

「□のファンって、昔っから変わってる人多いよね。遠くから見るだけで近寄る気ない。高嶺の花って意味じゃなくて。」
「そりゃ近寄りたいと思うような顔じゃないから。それは百も入ってるの？」

「顔じゃないってば！でもオレにとっては高嶺の花だったよ。」

『何の仕事してるの？先輩。』
百「女優さん。」

【･･･は？】

目を丸くした私に、百さんはケロッとした表情で繰り返して言った。

「女優で、□って名前でやってるよ。」
『え？音楽してたのに？』
「うん。」
『音楽関係の仕事やなくて？』
「うん。」

私の問いに、百さんと先輩が一緒になって、コクコク頷く。
千さんがまた爆笑してる。
本当笑いのツボ低いな。

それに似たもの夫婦･･･じゃなくて！

『なんで？』

夢ではなかったのか、プロにはなれんかったのか。
音楽の道を選ばなかった理由を聞いたのに、百さんから違う言葉が返ってきた。