三月と初めての大喧嘩は･･･ ページ41
部屋を出ると、お風呂あがりのヤマさんがいた。
「A、俺どこで寝ればいいんだ？ソファ？布団は？」
『私の家じゃないけど、知ってると思ってるのね。』
思わず笑う。
「合鍵持ってんなら知ってんだろ？」
『まあね。でも布団は･･･ちょっと待って。』
スタジオに戻って千に声かける。
「勝手にしなよ。」
わー、仕事邪魔されたと思ってるな、これ。
怖ー。
戻って、ヤマさんにベッド使えばと言うと微妙そうな顔をされた。
『だってしょうがないでしょ。百は千とベッドで寝てるよ。私の布団はここに敷くし。』
わ、ヤマさん、うげーって顔した。
笑える。
「男二人で１つのベッド？流石だな。」
『今日は徹夜覚悟だから別に私の布団使ってもいいけど。』
「それはやめとく。」
即答された。
ちょっと傷付く。
くさくないと思うけどなー。
お風呂からあがると、ヤマさんは寝れないらしくてソファで本を読んでいた。
ヒョイと取り上げて本を閉じる。
「何すんだよ。」
『ヤマさん、こんなのなくても出来るよ。出会った頃言ったよね。君達は不器用だけど、ちゃんと話し合えば意外とすんなり解決するかも知れないよって。大事なモノが出来た時、苦しむのは自分だからって。』
「ああ、覚えてるよ。･･･俺がAを好きだって気づいた日だ。」
【え。】
「Aに好きな奴がいるって、分かってて好きになった。自分から誰かを恋愛対象としてみたのは初めてだった。･･･ミツに、人って好奇心で聞いたりするもんでしょって言ったら、Aにもそう思ってんのかって言われたよ。Aは知ってんのにな。･･･初めから知ってんだろ？お前から俺に対する好奇心は、からかう以外で感じたことはない。」
ヤマさんがまっすぐ私を見る。
「それだけじゃない。Aは人にレッテル貼ったり決めつけたりしないのに、分かってるっていうか、理解してる。だから皆、お前に惹き寄せられるんだろうな。」
『そんな出来た人間じゃないけど。神様じゃないんだから。』
「はは。･･･でもだからこそ、時々Aに寄りかかりそうになる。」
寄りかかる･･･。
確かに、私も記憶に頼るって意味では寄りかかっているかも知れない。
だから記憶がある事を話した時、未来を聞かないという約束をした。
きっと、それを分かってるから聞かないでいてくれるんだろうな。
百も。万も。
冷蔵庫からお茶を出してコップに入れる。
ヤマさんもいるか聞くと頷いたので、コップに入れて渡した。
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作者名：miz | 作成日時：2019年5月16日 5時
