笑顔のキミが好き【if･･････二階堂大和】3 (ページ43)

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食事の後、Aと千さんがスタジオにこもった。

仕事。
でも２人きり。

仕事。
でも防音室。

仕事。
･･･“合鍵”

「･･････つら･･･。」

来んじゃなかった。
来なければ、知らずにいるのか。これを？

数分が何時間にも感じる。
ため息しか出なくて、風呂に入る気にもならない。

何度も時計とスタジオを見るけど、見る度に1、2分位しか経ってない。

【俺、こんなに女々しかったっけ･･･】

あいつが絡むといつもこうだ。
しんどい。

『ヤマさん？お風呂入ってないの？』

肩に触れた温かさにビクッとした。
振り返るとAがいた。

答えずに、Aから視線を逸らす。

『入っておいで。体温めた方が、心とか体の緊張がほぐれるよ。』

「いい。入る気しねえ。」

『･･･ヤマさん。そのままじゃ臭くなるよ？』

臭い･･･

【かなりショック･･･】

「分かった。入る。」

鞄からパジャマとか出そうと体を起こすと、Aと目が合った。

何、このめっちゃいい笑顔。

「･･･お前、謀ったな。」
『何が？おじさん特有の加齢臭でも気になるの？』

ムカつく。

「そこまで年取ってねえよ。Aの方が年上じゃねえか。」

『私は入る。ヤマさんの後にでも。』

「千さんは？」

『ああ、放っておいていいよ。没頭したら食事も忘れるし。徹夜してたら起こす必要ないからいいけど、体には毒だよね。』

自分から聞いたのに聞きたくなくて、Aに背中を向けてパジャマと下着を出す。

良く分かってんな、こいつ。
そりゃそうか。10年位の付き合いだもんな。

俺なんかよりも、ずっと長い。

「お前、何で俺と付き合ってんの？」
『は？』

「千さんとか万理さんとか･･･百さんの事は好きだろ。なのに、こんな面倒くさいのと付き合う意味が分かんねえ。百さんか千さんと付き合えば？」

言って自分の言葉に傷付く俺がいる。

分かってる。
これは嫉妬だ。

Aは何も言わない。
ため息をついて体を起こして、背中を向けてたAを振り向くと、俺を睨んでいた。

『そう。じゃあそうしていいのね。』

「え？」

『ちょうど良いね。距離あけたまま別れるの。じゃあこれ返す。』

Aが首から下げてたネックレスからヤスの指輪だけを取って、ネックレスを俺に放り投げた。
音を立てて床に落ちた。

【俺があげたネックレスと指輪･･･】

『私の感情は“そこ”にあったけど、ない事にされるんだ？』

ハッとしてAを見ると、目に涙が溜まっていた。