日記ではない日記帳 ページ29
部屋に入ってきた百が、気まずそうに私の手元を見た。
「ごめん！荷物の整理中とは思わなくて！」
『いや、下着だけは片付けたからいいよ。何？』
「あー、いや。皆のお風呂上がり、IDOLiSH7のはマネ子ちゃんにチェックしてもらわないとさ。他はOKだし。」
「はい。お預かりします。」
百が紡にデジカメを渡して私の荷物整理を見てきた。
「ん？･･･A、日記帳は持ってきてないの？」
『んー？日記帳？』
「毎日つけてないの？」
『日記なんてつける訳な･･･』
荷物の整理を続けながら、そこまで言って気づいた。
何も考えずに話していた。
【ヤバイ。】
百を見ると目を丸くして私を見ている。
こんな所で地雷を踏まれるとは思ってなかった。
百から目を逸らした。
「･･･日記、書いてないの？」
『あー、いや･･･』
何て言おう。
百に日記帳の存在を知られた事を万に言っとけば、対策とれたかもしれないのに。
失敗した。
「百さんOKですよ！･･･どうかしましたか？」
紡が不思議そうな顔をしながら百にデジカメを渡した。
百は受け取りながら私をジッと見ている。
私はその視線を感じながらも、百の方を見れなかった。
「･･･マネ子ちゃん、Aって日記書くとか知ってる？」
「え？･･･いえ、一緒に暮らしていても一度も見た事は･･･」
「そう。･･･ちょっと2人にさせて貰っていい？」
紡は頷いて出ていった。
どうしよう。
日記書くって何で言わなかったんだろ、私。
百は私の前に座って言った。
「A、日記帳持ってるよね？」
『持ってます。』
「あれ、中身は日記じゃないの？書かないって言ったけど。」
『･･････。』
日記ではない。
前世の記憶の、アイドリッシュセブンの記録だ。
でも言えない。
万にしか、言ってない。
答えない私に、百は声のトーンを変えずに言った。
「教えてくれる？あの日記帳は何？」
『･･･。』
「ただの日記帳じゃないんだね？」
『･･･っ』
なんて答えれば正解なんだろう。
まだ言いたくない。
きっと百は悲しい事を自己犠牲をしてでも変えようとする。
私がいるだけで他にも変わってる事があるのかもしれないのに。
最悪の未来になる可能性があるのだけは避けたい。
俯いて、膝の上で手をギュッと握った。
「A。泣かせたいんじゃないよ。･･･じゃあ、これだけ。いつか話してくれるって言った事と関係ある？」
百を見ると寂しそうな顔をしていた。
頷くしかなかった。
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作者名：miz | 作成日時：2019年4月19日 5時
